「今回の機会を活かさなかったことで、今後は絶対解散できない。再選の可能性もゼロ。地獄の始まりだよ」
衆院解散を匂わせながら、結局は先送りした岸田文雄首相について語ったのは、自民党長老議員だ。
「岸田は当初、解散を100%決めていたが、最後の最後で弱気になった。最大の理由は、党の事前世論調査で選挙に突入すれば40議席前後減るという結果が出たため。その発端は長男の官邸でのドンチャン騒ぎと、選挙区候補を巡りギクシャクした公明党との関係悪化にある」(前出・自民党長老議員)
そして今後の岸田首相についても、こう切って捨てるのだ。
「彼が自画自賛し押し進めている『異次元の少子化対策』は、陰で『異次元どころか低次元の少子化対策』などと揶揄されているほど。時間が経つほど粗が見えてくるだろう」
「異次元の少子化対策」の何が評判が悪いのか。別の自民党関係者は溜め息交じりにこう明かす。
「新児童手当は支給額が第3子以降、0歳から高校生まで3万円支給というから、一見は太っ腹の案に見える。しかし父兄間の評判はボロクソ。例えば高校生を筆頭に3人の子がいるとして、第1子が高校を卒業すると2人目が第1子、3人目が第2子としてカウントされ、一番下の子は3万円を受け取ることができない。呆れてものも言えない愚案だ」
現状でも子供がいる世帯で第3子以降がいる世帯は、わずか17%前後。ここに岸田流のカウント法が加わると、3万円支給の子は超限定的となる。社会福祉施設関係者も言う。
「その上、児童手当が拡充されることで扶養控除縮小の話もあり、『異次元』がスタートすることで返って手当が減る家庭が出る可能性もある。おまけに必要な3兆円財源をいまだに見つけられない見切り発車。増税に頼らず歳出削減でというが、医療や社会保障分野での歳出削減という話も一人歩きしており、国民負担が増加する可能性さえある」
昨年の骨太方針で決まった防衛費の増大も財源が曖昧だ。先の長老議員が言う。
「今年秋にも解散するのではというが、今後は少子化と防衛費の問題に加え、マイナンバーカードの混乱の3点セットで政権支持率が低下の一途をたどり、打って出られなくなる。今回、多少厳しくても解散することがベストで、ラストチャンスだった。だから党内では、水面下でポスト岸田に眼が向き始めている」
サプライズ好きな岸田首相だが、まだ秘策は残されているのか。
(田村建光)