イスラエルとパレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するハマスの「戦争」がエスカレートしている。その影響で、来年行われるパリ五輪開催にも暗雲が立ち込め、仏マクロン政権は焦り始めているという。
日本の公安関係者が解説する。
「ハマスのイスラエルへの攻撃で、フランス人10数人が死亡し20人近くの消息がつかめていない。そのためマクロン大統領は英、独、イタリア、米国の4カ国の首脳とともにイスラエル支持とハマスを非難する共同声明を発表した。だが、そのフランスではイスラム教徒が約500万人と欧州では最も多く住む。そのためイスラエルのガザ爆撃を過剰と非難するパレスチナ支持のデモも起きている」
またフランスでは10月13日、高校でイスラム主義者の男に教師が刺殺される事件も発生。パリ中心部のルーブル美術館と郊外のベルサイユ宮殿では爆弾騒動も起きた。そのため政府は国内のテロ警戒水準を最高に引き上げ、全土に兵士約7000人を配備し警戒を強めている状況だ。
軍事アナリストが言う。
「イスラエルが侵攻を仕掛けても、即座のハマス殲滅はおそらく無理だろう。ハマス幹部の一部はガザの外にいて支持を出しているといいますからね。またハマスが拠点とする『ガザのメトロ』いわゆる地下網要塞への攻撃も、激しいゲリラ戦の上に殲滅しきれない結果が待っている。10月18日には米バイデン大統領がイスラエルを訪問し、まずはガザの人道支援の道を探るようですが、結局は停戦なり、決着がすぐにつかない長期戦となる可能性が極めて高い」
そして、こう続ける。
「来年7月のパリ五輪の時期になっても終わりは見えないのでは。そうなるとテロの可能性が一段と高まるだけに、マクロン政権も気が気ではないようです」
五輪では1972年、ドイツのミュンヘン大会で選手村の襲撃事件、96年の米アトランタ大会でも爆破テロが起き犠牲者が出ている。冒頭に記したフランス各地での反イスラエルのデモの動きは欧州各地に拡大しつつあるが、果たして来年、五輪などやっている状況にあるだろうか。
(田村建光)