日本シリーズ進出を目指して阪神が好スタート。初戦から広島に4-1と逆転勝ちし、2戦目は2-1の劇的なサヨナラ勝ちで一気にクライマックスシリーズ(CS)勝ち抜きに王手をかけた。過去4度のポストシーズンで初めての初戦勝利には「そら大きいよ!」と自信たっぷりにコメントしていた岡田彰布監督だが、CSに入っても「予言」が当たりまくっている。
チームのCS初本塁打は初戦、ドラフト1位のルーキー森下翔太だった。CSデビュー戦のルーキー弾はセ・リーグ史上初で「浮いてきた甘いボールに対してしっかり自分のスイングができた」と本人も笑顔だった。
森下は後半戦に絶不調に陥った。しかし岡田監督は「(森下には)突貫工事、短期で治るという意味や」とCSに向け徹底して鍛え直した上、ラッキーボーイになることを「確信」していたというのだ。
「打撃不振の解決策については『試行錯誤や。1打席、1球でハマる時もあるんよ。あっ、今合うた、みたいな』と、独特の岡田語で森下の復活を言い切っていました」
と岡田番の記者は舌を巻いていた。森下はそもそも「外れ1位」。阪神は昨年のドラフトで浅野翔吾(高松商)獲りで巨人と競合した、岡田監督は原辰徳前監督にくじ引きで敗れる形となった。しかし前出の記者によれば、
「何も落ち込んでいませんでした。森下を獲得できてよかったという雰囲気だった」
さらにシーズン中でもルーキーながら徹底的に起用した森下について岡田監督は、「タイガースのために右打者を育てなあかんのよ。森下は右にも打てる。(甲子園の)の浜風にも合う。俺のプロ入りした時よりも数段上や」と絶賛していたという。
前回の岡田政権時代、2004年に獲得した鳥谷敬氏にこだわったのと同じパターン。この時、阪神の遊撃手には3割を打った藤本敦士がいたが、同じ遊撃手の鳥谷氏を「タイガースの顔」になる、と確信した岡田監督は自らスカウト登録をして視察していたという。
CSのファイナルステージ初戦で同点アーチを打った森下に前出の記者は、
「記者席でゾッとした阪神担当記者はたくさんいました。岡田さんの言う通りに復活したんですからね」
と言う。思えば開幕前に「今季に『アレ』(優勝)を達成できる」に始まり、真夏の死のロード直前には「調子がいいもんで試合をやればいい。このチーム(今年の阪神)は10月あたりに一番強くなるんや。見ててみぃ~や」とした予言も当たりまくり。38年ぶりの日本一に向けて視界は良好だ。
(小田龍司)