今春のWBCで3大会ぶりの優勝を果たした侍ジャパン。大谷翔平(29)とマイク・トラウト(32)の劇的な同僚対決は記憶に新しいが、今後も日本は世界一を保持し続けられるのか? 太鼓判を押す、プロ野球〝名参謀〟の解説を聞こう。
アメリカで世界初のプロ野球団、シンシナティ・レッドストッキングスが創設されてから約150年。その間の130年ほどは、最強の座にアメリカがふんぞり返っていた。しかし06年の第1回WBCから、常に後塵を拝していた日本が引きずり下ろしたのだ。
「勝負は水物とはいえ、日本とアメリカが野球という競技において世界のトップ2なのは間違いありません。アメリカは歴史が長い分、野球のスタイルが確立している。当然、データの活用など進歩もあるが、基本的にはホームランか三振か、力と力の勝負が好まれます。それに対して日本は、高校野球が盛んなこともあって、技術を重視し、独自の緻密な戦術理論も育っています。近年は多彩なトレーニングや食事への意識も変わり、体格やパワー勝負でも、日本人がメジャー選手に負けなくなってきている。つまり技術、戦術の分、日本の野球の方が上だと、私は思っています」
そう答えるのは、指導者歴29年の知将・伊原春樹氏だ。
「大谷が最たる例ですよね。もちろん平均で比較すれば、まだメジャーの方が体は大きいですよ。しかし吉田正尚(30)だってユニホームを脱げばムキムキの体をしている。私は大学時代から吉田を見ていますが、当時からスイングスピードは抜群のものを持っていました。やはりメジャーでも成績を残し、チームに欠かせない存在となっている」
メジャーの方がプロ野球よりも、球団数も選手の人数も多い。つまりそれは、日本代表とアメリカ代表との選手層を比較して日本が不利であることを意味する。だが、いざ代表選手を選ぶ段階まで来れば、トップ・オブ・トップの選手の質は決して負けていない、とも伊原氏は主張する。
「メジャーの契約の問題でアメリカは本当の最強チームを作れないなんて言いますけど、今年もいい出場選手がそろっていましたよ。でも、そうした選手たちの中で本塁打王まで取っているのが大谷なわけです。そう考えれば、日本よりもアメリカの方が上、なんてことにはなりませんよ(笑)」
では大谷が出られない、あるいは引退した後でも、果たして日本は「野球世界一」であり続けられるのか。伊原氏が言う。
「日本はもはや、WBCでは常勝であるべき国。これまで5回開催されて、そのうち3度制覇しています。残りの2回も準決勝までは着実にコマを進めています。すべての大会で3位以上の成績を残しているのは日本だけですから。野球に関しては勝てる、というのが私の考え。大谷ほどの特別な存在はそうそう出るものではありませんが、今は意識の高い選手が独自にトレーナーを雇って体を大きくしたりもする時代です。メジャーに負けない逸材はまだまだ出てきますよ。むしろアメリカが3回に1回くらい優勝しないと、大会が盛り下がっていくんじゃないかと心配なくらいです(笑)」
26年に予定される第6回大会が待ち遠しい。