先頃の仏W杯では予選敗退で「8強」を逃したが、近年のラグビー日本代表の躍進は著しい。99年、03年W杯に出場し、「代表キャップ数」は62。現在は日本製鉄釜石シーウェイブスでアンバサダーを務める伊藤剛臣氏は、強くなった「ブレイブ・ブロッサムズ」をどう見ているのか。
自分が代表選手だったころ、日本は国際的に、「W杯に参加するだけの国」と思われていました。それが変わったのは、15年のイングランドW杯初戦、当時世界2位の南アフリカに勝った時でした。「W杯史上、最大の番狂わせ」と言われた勝利でした。
同大会では予選プール3勝もポイント差で及ばず決勝トーナメントには進めませんでした。ですが次の19年の日本大会は、全勝で決勝トーナメントを突破。この2大会の結果を受けて、強豪国の日本への印象が大きく変化するんです。
例を挙げると、それまでは強豪国とテストマッチ(親善試合)を組んでも1.5軍から2軍の選手しか来ませんでしたが、各国がちゃんと本気のレギュラー代表を呼んでくれるようになります。そして今大会前、日本は「ハイパフォーマンスユニオン」入りすることが決まりました。
ラグビーでは世界ランキング以外に、強豪国とそれ以下の国を分ける枠組みがあります。イングランド、スコットランド、フランスなど欧州の「シックスネイションズ」と、ニュージーランドや南アフリカら南半球の4カ国。この10カ国が常々「ティア1」と呼ばれ、世界の強豪国と言われていました。そこに日本を加えた新しい枠組み「ハイパフォーマンスユニオン」ができた。つまり、ようやく日本が世界トップレベルの仲間入りをした、と認められたわけなんです。
実はラグビーW杯は長らく、強国や伝統国のスケジュールを優先する傾向がありました。日本も、15年に南ア戦勝利後、中3日でスコットランドと対戦して敗れています。今年のフランスW杯ではある程度是正されていますが、それでも「ハイパフォーマンスユニオン」とそれ以外の国にはスケジュール格差がある。
ラグビーはコンタクトスポーツですから、最低でも5日から1週間は試合間隔が欲しい。日本も強豪国として恩恵を受けられるようになったので、今後はW杯で上位を狙えるアドバンテージを得たと言えます。
今後は決勝トーナメントを戦い抜くためにも、選手層をさらに厚くする必要があるでしょう。日本はまだ、スタメンとメンバー外の選手に差があります。
16年から20年にかけて、日本は代表クラスの選手を集めた「サンウルブズ」というチームで、スーパーラグビーに参戦していました。フィジカル、スピードに優れた海外トップ選手との対戦という意味で、代表強化にも直結しました。同じように今の若い選手たちにも、海外のリーグに挑戦して地力を高めてほしい、と思っています。
今回予選で惜敗したイングランド、アルゼンチンが4強に残っている(10月19日現在)ことからも、本当の意味での「世界トップレベル」に近づいてきているし、どの国とも10戦やれば2、3戦は勝てる実力もある。20〜30年ぐらいはかかるかもしれませんが、W杯で優勝する日本代表の姿を見たい、というのが僕の願いですね。