「岸田総理はつかみどころのない『どじょう総理』だ」
こうボヤくのは自民党ベテラン議員だ。
かつて「参院のドン」と言われ今年6月に亡くなった青木幹雄元官房長官は「選挙の神様」と呼ばれ、「青木の法則」を産み出したことでも知られる。その法則とは、「歴代内閣は内閣支持率と自民党支持率を足して50を超えた内閣は早晩倒閣する」というものだ。
10月最新世論調査では毎日新聞が政権支持率は前月同様25%だが、政党支持率は前月より3%下落の23%で「青木の法則」50%を切った。また時事通信の調査でも政権支持率が26.3%政党支持率は21%で、こちらも「法則」の数字を切っている。
岸田内閣は5月のG7広島サミットの成功やウクライナのゼレンスキー大統領との電撃会談で支持率アップ以降、問題視されたのは岸田総理の長男・翔太郎氏の官邸ドンチャン騒ぎ程度で、スキャンダルらしい騒動もない。しかし支持率は下がり続け、ついに「青木の法則」に引っ掛かってしまった。選挙アナリストが言う。
「岸田内閣はデフレ脱却寸前など経済も着実に頑張っているのに、支持率が伸びない。それは一般人にズバリ分かりやすい政策、成果がないからです。特に若い世代や現役世代は苦しい生活状況が続き、そこに強烈なインパクトをもたらす政策が打てないために支持率がジリ貧なのです」
若者世代に人気がないというのは時事通信の調査でも明白で、18~29歳までの内閣支持率は10%そこそこ。30歳代でも18.1%だ。
それにしても冒頭のように岸田内閣が「どじょう総理」とも揶揄されるのはなぜか。先の自民党議員が言う。
「支持率が伸びないことで総理が何回もチャレンジして空回りしているのが解散総選挙。来年の総裁選前に解散し、勝って自民当選議員の信任を得て総裁選再選が基本戦略。ところが支持率低迷で解散できなければ『岸田総理では選挙が勝てない』と自民党議員の間で岸田おろしが起こる。今はその瀬戸際で、総理にすれば頭が痛いはず。それでも国会でも会見でも何やらニヤケて見えるし、周囲からも心境が読めず掴みどころがない。だから『どじょう総理』などと呼ばれているんです」
確かに、「経済、経済。経済!」と連呼した10月23日の臨時国会の所信表明演説でも、ヤジを浴びながら何やら笑みを浮かべていたのは印象的だった。ただ、官邸関係者は漏らす。
「早期解散できなければ来年は一気に『看板取り替え』と岸田おろしの可能性が高まるだろう。だから総理は来年1月、通常国会冒頭で解散する。その確信があのニヤケに出ているんだろう」
自民党内では疑心暗鬼が広がっている。
(田村建光)