「人生ナメんなよ!まだ私から搾り取ろうとしている、人のことブッ壊して、まだ壊そうとしている」
深夜の新宿・歌舞伎町で警察官に取り囲まれながら、大声で喚く20代の女性。カッターナイフで刺したというホストへの不満をブチまけたのだった。11月5日のことだ。
殺人未遂容疑の現行犯で逮捕されたこの女性はホストに1000万円も貢いだ、とする報道もあるが、事件の映像がSNSでアップされるなど、大きな話題となった。「ホストクラブがマルチ商法まがいの手口で、若い女性に数百万円の売掛金を背負わせている」とばかりに、ホストの稼ぎ方が社会問題になりそうなのである。
数多あるSNS動画では、世のホストクラブの店内の様子がいくつもアップされている。客から高額なシャンパンの注文を受けたホストに対し、マネージャークラスの男性から「クレジットカードは大丈夫か。ATMに先に行かせるか。飛んだ時のために、保険証か免許証のコピーをとれ。実家の住所、電話番号も確認しろ」との指示が飛ぶ。
注文と同時に実家の住所や免許証、保険証を確認する「飲み屋」というものが存在するのだ。最初は数千円の「初回体験」で入店し、連絡先を交換。朝から晩まで連絡し、疑似恋愛感情を持たせていく。しかも売掛金制度で、自分が使った額が、あとでどんな形で回収されるのかはわからない。実家まで取り立てに行くこともあるため、「ホストにハマッた娘のため」と、親が数百万円を返済するケースもある。かつての「サラ金」のようだ。
旧統一教会は霊感商法で社会問題化し、最終的に解散へと追い込まれつつあるが、ホストの手口と霊感商法をどう区別するのか。共産党系の関係者は、
「旧統一教会に対しては訴訟を起こす被害者がいたが、訴訟を起こすホスト被害者はなかなかいない。対応が遅れていることは否めない」
売掛金を禁止し、持っている現金またはカードの限度額以上は払えない仕組みにしたとしても、「なぜ歌舞伎町のホストだけ、売掛金が禁止なのか」という部分で説得力に欠ける。
確かに売掛金には、酒場の男と女の駆け引きの部分もある。また「酒の席でのこと。ダマされる女が悪い」「キャバクラで貢いで、すっからかんになった男もいる」などの声があるのも事実。だが、銀座の高級クラブに勤務したことがある30代の女性は異を唱える。
「銀座では、50万円以上の請求書を会社で処理できるクラスの人を開拓していく。歌舞伎町のホストのような荒っぽいことは、恥ずかしくてできない」
いずれにせよ、20代の女性に数百万円の売掛金を平気で負わせる仕組みは、どう考えても異常だ。オレオレ詐欺にばかり力を入れるのではなく、警察は酒場の闇にも踏み込むべきである。
(健田ミナミ)