さらに決定的だったのが、旧ジャニーズに対する国民感情だ。ジャーナリストの中村竜太郎氏が解説する。
「NHKがいちばん恐れるのは、受信料の不払いが起きることです。私は04年、当時の紅白プロデューサーによる巨額の横領を取材して世に出しましたが、それを機に、約7000億円と言われた受信料があっという間に3分の1ぐらい支払われなくなった、という前例があるんです。旧ジャニーズとの癒着を理由に受信料を払いたくないという人が出るかもしれない。それが紅白からの締め出しを後押ししたのでしょう」
スポンサー企業あっての民放局と異なり、NHKは国民の受信料で運営費用を賄っている。このようなリスクヘッジはある意味、当然のことと言えよう。「ちむどんどん」や「ちゅらさん」、「純と愛」など、朝ドラでたびたび沖縄をテーマに取り上げてきたのは、全国ワーストの沖縄県の受信料支払い率の底上げを狙ったものと言われている。
しかし、そうした台所事情と、今回の「出禁対応」に旧ジャニーズが納得できるか、というのはまったくの別問題だろう。
「もちろん、旧ジャニーズが今の状況で表立って抗議するわけにはいきません。でも『もうちょっと何とかしてくれてもいいじゃないか』と不満を抱くのが容易に想像できるほど、両者がズブズブの関係にあったのは確かです」(平田氏)
象徴的だったのは、ジャニーズJr.(現・ジュニア)が多数出演する「ザ少年倶楽部」(現在は「ニュージェネ‼」に変更)という番組だと、中村氏が指摘する。
「00年に放送開始して20年以上続いている、ジャニー喜多川氏が一番お気に入りと言われた番組です。局内のレッスン室を無料開放し、収録にはジャニー氏が必ず顔を出していました」
いわく、この番組はジャニー氏にとっての「釣り堀」とも言われた、品定めの場だったという。釣り上げた後はそのままトイレで‥‥というわけだ。これに平田氏も同意して、
「大晦日はジャニーズにとっても、恒例のカウントダウンコンサートがある重要な日。にもかかわらずここ数年の紅白には、5〜7組のグループを出演させてきた。当然のように、他番組のキャスティングなどで恩恵を受けてきたわけです。しかもNHKからジャニーズへ、逆にジャニーズからNHK関連会社への『天下り出向』すら行われています。NHKの手のひら返しは、両者の関係に確実にヒビを入れてるでしょう」