11月13日に発表された紅白歌合戦の出場メンバーから、44年ぶりに旧ジャニーズ勢の名前が消えた。理由は言うまでもなく、世界を騒がせた故・ジャニー喜多川氏による性加害問題だ。蜜月関係にあったNHKと旧ジャニーズの間で何が起きているのか。遺恨が渦巻く「出禁バトル」の行方を追った。
「新規の出演依頼は、被害者への補償、再発防止の取り組みが着実に行われていることを確認するまで、当面行わない」
NHK・稲葉延雄会長が旧ジャニーズ事務所(現・SMILE‐UP.)所属のタレントについてこう断じたのは、9月27日のこと。年末に控える紅白歌合戦についても「現時点ではそう(出演ゼロに)なる」と語っており、11月13日に正式発表された出演陣から、確かに旧ジャニーズ勢が締め出されていたのだ。芸能評論家の平田昇二氏が言う。
「そうは言っても、Snow Man やSixTONES、なにわ男子ら人気絶頂のグループあたりから2、3組は出るんじゃないか、と予想していた業界人は多かったと思います。何せ去年は6組も出ていたわけで、紅白はジャニーズにおんぶに抱っこの状態だった。『ジャニーズではなくSMILE‐UP.になったから』『補償には前向きに取り組んでいる』など、言い訳しようと思えばできますし、そもそも『補償が終われば』って、現実問題としていつになるか、まったく読めませんから」
しかし結果としては、前代未聞の出演ゼロに舵を切ることになった。それはなぜか。NHK関係者によれば、
「実際、紅白サイドは、出す気マンマンでしたよ。視聴率獲得には旧ジャニーズ勢が欠かせないし、何より紅白は前例主義が強く、一度出演ゼロにしてしまうと旧ジャニーズ枠を復活させるのが難しい。つまり、翌年以降に起用しづらい状況を作ってしまうからです。なのに、こうなったのは、局内のパワーバランスが影響したから。番組制作部門と報道部門の綱引きがあったんです」
故・ジャニー喜多川氏の性加害問題が次々と発覚して以降、NHKは先陣を切って報道してきた。10月2日に行われた会見での「指名NG記者リスト」の存在を暴き、同9日には身内の恥を晒す形で、ジャニー氏による自局内の「トイレ暴行」を報じている。
「業界全体で視聴率が落ち込んでいる昨今、NHK内では制作よりも報道の方が力が強くなっている。そして報道部門は、自局の放送センター内で性加害が行われたという事実に激怒しています。当然、こんな状況下で旧ジャニーズのタレントを起用するなんて、看過できるわけがない。制作部門にすれば苦渋の決断で、まさに『泣いて馬ば 謖しょくを斬る』となったわけです」(NHK関係者)
両部門の対立で、NHKも一枚岩ではなかったようだ。