業界屈指の時代劇研究家で知られ、大河ドラマに関するコラムも数数多く発表する、ペリー荻野氏(61)。大河ドラマ全62作の中から、「非業の死」「妖艶な女優」「迫力の合戦」をテーマに名場面を振り返ってもらった!
まずは、荻野の大河ドラマ初体験となった作品から紹介してもらった。
「小学校6年生の時に、ショーケン(萩原健一)が好きで観たのが『勝海舟』(74年)でした。渡哲也さんや松方弘樹さん、大原麗子さんなど、錚々たる役者が出演した作品でね、もう何より岡田以蔵役のショーケンが格好いいったらなくて。というわけで、個人的には来年、大河ドラマ50周年を迎えるんですよ(笑)」
来年で大河ドラマファン歴、半世紀! そんな荻野氏に、「非業の死」にまつわる名シーンを選んでもらうと。
「ひとつは、福山雅治さんが竜馬を演じた『龍馬伝』(10年)です。とにかく福山さんの竜馬は明るくて、男っぽい感じでね。ドラマはラストまで、その雰囲気のまま進んでいくんですが、暗殺のシーンでそれが断ち切られる。この作品の中で最も暗いものが最後にドーンとくるんですよ。ちなみに、史実では暗殺者の正体は不明ですが、このドラマでは見廻組の今井信郎が襲撃します。演じたのは市川猿之助さんで不気味さは半端なかったです。もうひとつが、『黄金の日日』(78年)で石川五右衛門を演じた根津甚八さんです。大泥棒でおなじみの五右衛門ですが、このドラマでは権力者に立ち向かう熱血漢のキャラです。最期は、秀吉に立ち向かっていくんですが、捕縛され、ズタズタになるまで拷問されるんですよ。また、堺の商人たちを守るために、仲間のことについて口を割らないっていうのもよくて。釜茹でにされる時も、笑いながら仰向けになってザバン! って。いやー泣きましたね!」
そして、「妖艶な女優」については、昭和を代表する名女優を挙げてくれた。
「中井貴一さんが主演した『武田信玄』(88年)の小川真由美さんはすごいですよ。役どころは信玄の正室に仕える女性で、敵方を誘惑するシーンがあるんですよ。その時の相手が、『アタック25』でおなじみの児玉清さん。相手の手を取って、自分の胸元に差し入れるっていう‥‥もうね、怖いよそんなの(笑)。でも、あまりに艶っぽくて必見ですね。それと、妖艶とは少し違いますが、『おんな太閤記』(81年)に出演した、池上季実子さんもいいですよ。秀吉の側室茶々役で、正室を恐れていて、何かと『いやです? 怖いです?』って甘い声で言うのよ(笑)。小悪魔キャラですよね」
また、一番の見どころとなる「合戦シーン」には、「葵 徳川三代」(00年)を強力にオススメする。
「徳川家康の関ヶ原の戦いは圧巻の迫力ですよ。エキストラ300人と、馬も60頭も使って。話によると、近隣の馬場からお借りして何とか準備したそうです。今では、コストや労働環境の問題で実現できないと言われる伝説のシーンです。NHKの宝となっているそうで、現在もイメージ映像として活用されていますよ」
そんな名シーンを生み出し、60年目を迎えた大河ドラマの真の魅力とは?
「1年間を通じて話題を提供し続けるドラマは他にはないと思うんです。昔に比べて、予算などが理由で大規模なロケができない一方で、『鎌倉殿の13人』(22年)から本格的に最新のインカメラVFXも活用されています。視聴率だけを見て面白さが評価されることもありますが、こうした新たな魅力も今後は増えてくるはず。何より、あれだけ膨大な歴史の知識や小道具をストックしているコンテンツは、世界に誇れるものですよ。そんな素晴らしい作品をぜひ楽しんでほしいですね」
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