巨人から自由契約となった中田翔の、強引ともいえる「オプトアウト行使」に、とある疑惑を指摘する声が駆け巡っている。それが「タンパリング隠しではないか」というものだ。
日本球界でのタンパリングとは、日本プロフェッショナル野球協約で第73条(保留を侵す球団)において定められている。これは全ての保留選手が所属球団以外の球団から交渉を受け、または契約を締結し、所属球団との公式交渉を拒否することを禁止しているものだ。違反とみなされた場合、タンパリングを行った球団と選手は制裁金を科されるとともに、双方の契約締結は永久に禁止されることが決まっている。スポーツ紙プロ野球担当デスクが言う。
「球団関係者が接触すれば。完全に違反。しかし過去には、巧妙に行われたケースは皆無ではないでしょう。例えば当該選手と仲のいいマスコミ関係者が、球団との『伝書バト役』を務めるケースが何度もウワサになっている。これならタンパリングにはならないからです。そのマスコミ関係者も、正式に決まった場合はスクープを取れるし、球団と当該選手に影響力を持てる。喜んで引き受ける人間もいると聞いていますね」
中田の場合、巨人と複数年契約を結んでいたが、途中で契約を解除できるオプトアウト条項が含まれていた。そのため、保持する海外FA権を行使せず、オプトアウトで自由契約になる道を選択しても、違反でもなんでもない。だが、問題はその時期だ。スポーツ紙ベテラン遊軍記者も、
「FA権行使期限の締め切り直前になって、強引ともいえる態度でオプトアウト権を行使したのは、不思議でしかない」
と首をかしげ、こう続ける。
「やはり、どこかのチームがハトを飛ばして話を持っていった、と考えるのが自然な気がします。FA宣言後すぐに入団が決まると、タンパリングを疑われて問題になる可能性がある。でも自由契約であれば、12球団どこでもOKというカムフラージュができます。ある意味、タンパリングから目をそらす作戦かもしれないと…」
確かに直前までFA権行使をめぐって頭を悩ませていたはずの中田が突然、オプトアウトを持ち出すのは変な話だ。タンパリング隠しのため黒幕が暗躍した、と勘ぐられても仕方がないのではないか。
(阿部勝彦)