歌唱が評価されることが少ないHey! Say! JUMPだが、アーティストとして実は記録を保持している。デビューは2007年。CDデビューからわずか38日目に東京ドーム公演を成功させ、平均年齢15.2歳で同所の最年少記録を刻んでいる。数カ月前まではKAT-TUNら先輩グループのバックダンサーを務めていた10人組(当時)。それが、自身たちのファン5万5000人で巨大ドームを埋め尽くしたのだから、快挙といえた。
ところが今年、デビューシングル「Ultra Music Power」の歌唱中止を発表した。ジャニー喜多川氏の性加害問題を受けて、同楽曲の歌詞が「J!Johnnys’」という掛け声から始まることを理由に苦渋の決断を下した。
ファンはそんなことは意に介さず、むしろ年々高まるステージスキルに期待を寄せる。アラサーになったJUMPがこの数年のアリーナやドームツアーで見せている舞台演出は、高度でハードになっているのだ。
18年の東京ドーム公演では、センターステージが回転し、さらに傾いた。メンバーはそこで歌って踊り、滑らないように体幹を鍛えた。さらなる特殊ステージとなったのは、翌19年のドーム公演。地上10mのステージで、ついに360°前向きに回転した。日本人アーティスト初の演出だった。
「ステージは前方に進みながら、メンバーが固定されている透明のガラスが前方に回転しました。頭が地に向かったちょうど180°のときに、ファンともっとも近い距離になるのが特徴です。でも、メンバー的にはそのときの顔がいちばんブサイク(笑)。汗がしたたり落ちているし、顔は紅潮しているし。顔が命のアイドルにとっては致命的といえなくもない」(エンタメ誌ライター)
このドーム公演は、山田涼介が演出。「回転とかしちゃう?」と軽いノリで口に出すと、スタッフが実現させてしまった。セットを保管する倉庫も必要で、リハーサルのために巨大アリーナを貸し切る必要もある。メンバーの手の甲に鏡をつけ、その光を反射させる演出もあるため、8人全員がそろう入念なリハがマスト。それでこそ達成した日本初だった。
ほかにも縄梯子での舞や布を使ったフライング、メンバー全員が空中で円になって舞うサークルフライング、空中ブランコ、ジャグリングや綱渡りもあり、コンサートはさながらラスベガスのショー。ちなみに、山田は高所恐怖症。それでもドームの天井付近での演出を辞さないのは、プロたるゆえんかもしれない。
(北村ともこ)