「腱鞘炎」は、楽器を演奏する人やテニスなどのスポーツをする人など、日頃から指や手を酷使する人がなりやすいと思われがちだが、実は加齢と共に発症しやすくなる。
これは指の腱鞘が何らかの原因で厚くなったり硬くなったりすることで、腱鞘を通過する腱と「腱鞘」がこすれ合い、炎症が起こって「痛み」や「腫れ」が現れる症状を指す。手の様々な箇所で発症するが、代表的なものは指がカクンと跳ねる「ばね指」と手首で起こる「ドケルバン腱鞘炎」だ。
「ばね指」は、指の腱鞘が炎症を起こすことで生じる。スムーズに指の曲げ伸ばしができなくなり、曲げた手指を伸ばそうとすると、ばねのように弾けて動く症状が特徴だ。
一方「ドケルバン腱鞘炎」は、「橈骨茎状突起」という親指側の手首付近の腱鞘が炎症を起こして発症する。物を握ったり摘んだりする時に痛みを感じやすくなる。痛みにより手首や指の動きが鈍くなると、関節が固まってしまうケースもある。
腱鞘炎を発症すると、日常生活に支障をきたしてしまう可能性があるため、病院を受診する前にまずは気軽にできるチェックテスト「アイヒホッフ・テスト」を試してみるのも有効だ。利き手の親指を中に入れて手を握り、そのまま手首を小指の方に傾ける。この動作が痛みのためにできない場合には、腱鞘炎を発症している可能性が高い。動作自体はできるがわずかに痛みがあるという場合も、今後「腱鞘炎」に発展してしまう危険性がある。
症状を緩和するためには、原因となった作業や運動、スマートフォンの使用などをできるだけ控え、患部を安静にすることが重要だ。大したことはないと放置されがちな「腱鞘炎」だけに、悪化する前にセルフチェックと整形外科の受診が必要だ。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。