アメリカ・ニューヨーク州ロングアイランドのサウスショアにある人口1万程度の町アミティビルで、両親と弟妹の6人がライフルで殺害される事件が起こった。1974年11月13日のことである。
容疑者として逮捕されたのは、この家に住む長男のロナルド・デフィオ容疑者(当時23歳)。43歳の両親と、9歳から18歳の弟と妹4人はいずれも就寝中だったが、長男は全員を銃殺後、両親が殺害されたとして近くのバーに助けを求め、自ら警察に通報したという。欧米の猟奇事件に詳しい専門家が語る。
「当時、事件を報じた『ニューヨーク・タイムズ』などによれば、容疑者は日頃から酒を飲み、ドラッグを常用。家族の間でも喧嘩が絶えなかったと言われます。ロナルドの証言を不可解に感じた警察官が尋問すると、ロナルドは犯行を自供。ただし、犯行の動機は『頭の中の悪霊に、家族を皆殺しにするよう命じられた』と主張したことで、前代未聞の猟奇殺人として連日、メディアで大々的に報じられることとなりました」
ロナルド容疑者には第2級殺人の有罪判決が下され、25年の終身刑を言い渡された。それから1年後、惨劇があったこの家は「訳あり物件」として、破格の安さである8万ドル(当時の価格で約2500万円程度)で売りに出され、ラッツ夫妻が購入した。
「ところが入居したその日から、壁が叩かれる音がするほか、窓が突然閉まる、ドアが外れるなど、様々なポルターガイスト現象が起こり始めました。夫の証言によれば毎晩、夜中の3時15分に目覚めたというんです。実はそれが一家殺人が起きたとされる時刻だったのですが、恐怖におののいた一家は、わずか28日で引っ越してしまったのだと…」(前出・欧米の猟奇事件に詳しい専門家)
1977年、そんな怪奇事件を題材にした小説「The Amityville Horror, A True Story」が発売された。2年後の1979年には、この小説をもとにした映画「悪魔の棲む家」が全米で公開され、大ヒットする。
ところが映画のモデルとなった一家惨殺事件の犯人たるロナルド服役囚が2021年3月13日、獄中で謎の死を遂げたことがわかり、米メディアで大きく報じられた。
刑務所内で男がどんな生活を送っていたのかは不明だが、最後まで「俺には悪霊の声が聞こえる」と言い続けたとされる。その死から2年ほどになる今でも、「悪霊」に呪い殺されたのではないか、との噂は絶えない。
(ジョン・ドゥ)