立憲民主党は前身の民主党、民進党時代から与党攻撃をすると、自らに跳ね返ってくる「ブーメラン現象」に直面していたが、同じことが岸田文雄首相にも起きている。
岸田首相は自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐり、ノルマを超えた分を所属議員に還流する「裏金キックバック」を政治資金収支報告書に記載していなかったとして、清和政策研究会(安倍派)出身の閣僚ら政務三役を内閣から一掃することを決めた。
不記載を「安倍派がしでかした問題」(自民党幹部)と位置づけ、安倍派を排除することで内閣の求心力を回復しようとしたのだ。
ところが安倍派だけでなく、岸田首相がつい先頃まで会長の座にあった「宏池政策研究会」(宏池会、岸田派)でも、実際に集めた収入よりも少ない金額が政治資金収支報告書に記載されていたと、NHKが報じた。NHKは「関係者への取材でわかった」としているが、この「関係者」は東京地検特捜部とみられる。
NHKによると、収支報告書に記載されていなかった収入の規模は、安倍派や二階派に比べると少ないということだが、それでも「不記載」に変わりはない。「不記載」は政治資金規正法違反に該当する犯罪行為。安倍派からはさっそく、
「岸田首相に我々を批判する資格はない」(閣僚経験者)
との声が早くも上がっている。
岸田首相は2年前に自民党総裁、そして首相に就任した際、派閥を離脱することなく12月7日まで宏池会の会長を務めていた。早々に派閥を離脱していたならば「知らなかった」と言い逃れできたかもしれないが、つい最近まで派閥会長であり、「不記載」の最終的な責任は岸田首相にある。
岸田首相は臨時国会閉会後の12月14日に内閣改造・党役員人事を行い、安倍派を一掃した布陣にして反転攻勢に出たい考えだが、人事の前にまず自らの足元を見つめ直し、国民に説明する必要がある。
(喜多長夫/政治ジャーナリスト)