ただし、「現在のコミッショナー」には、星野氏は積極的な意欲を示していないという。スポーツ紙デスクが説明する。
「なぜなら『飼い犬』状態だからですよ。現在の制度では、コミッショナーとオーナー会議の2つが同等の権限、最終決定権を持つというおかしな構図になっている。それどころか、オーナー会議のほうが権力が強いとさえ言える。星野氏はそんなところに納まるつもりはありません。コミッショナーに最大の権限を持たせるためには、野球協約を改定する必要があります。が、各球団のオーナーがせっかく握っている権限をみすみす手放すわけがない。星野氏は『本当のトップ』ならばやる気満々で、どうすればいいか模索中なのです」
東北の王様になるにせよ、コミッショナーを狙うにせよ、楽天での「SA実績」がモノを言うわけだが、現状は超えなければならない壁が立ちはだかっている。球団関係者が裏事情を明かす。
「実は今、星野氏は思うような実権を握ることができない状況にあります。一説には、星野氏がSAに就任したのは、監督としての契約があと2年残っていたわけですが、その2年分の給料を払わないといけなかったから、だと。何もしてもわらずにただ払うわけにもいかないので、SAという肩書をつけてもらったというのです。5年5億円という報道が出ていますが、実際は2年2億円。監督として複数年契約を結んでいたのに、球団フロントは『もう少し安くしてもらえないか』と、2億円の年俸からの値下げを打診していたほど。SAとして契約することで、半額に抑えることができました。そもそも大久保監督の抜擢についても、猛反対する立花陽三社長(43)を押し切って、三木谷オーナーの一存で決まった。基本的にトップダウンの球団であり、星野氏が実権を握るにはオーナーから全幅の信頼を得ることが必要になる」
楽天における星野氏の立場を示す、こんなエピソードがある。
今オフの契約更改で、阪神から大減俸提示を受けた新井貴浩(37)が移籍を志願した。そこで、関係者を通じて星野氏に「楽天で新井を引き取ってくれないか」との依頼が舞い込んだという。
「ところが星野氏は、『俺は今、力がないからできない』と断ったのです」(球団関係者)
星野氏はSAを名誉職で終わらせないためにも、三木谷オーナーとの折衝でうまく立ち回り、球団との権力闘争を制さなければならない。だが、もし不調に終わったら──。
そこで浮上するのが、第3の野望なのである。
「星野氏は監督を辞任する際、半ば本気で楽天のGMになるつもりでした。しかし、現実は違った。今はむしろ、かつて監督、SD(シニアディレクター)を歴任した阪神に戻り、GMになることも狙っています。星野氏の阪神時代の側近とされる人物が今、フロントでオーナー付の仕事をしている。この側近は何かあったら、まず星野氏に相談をするのです。もし中村勝広GM(65)がクビになることがあれば、側近は『星野さんが(後任として)いいんじゃないですか』とオーナーに進言できます」
黒い野望を実現すべく、星野氏ははたして「炎のSA」として楽天を浮上させることができるのか。