プロ野球のファームの球団数が拡大された新シーズンが24年からスタートする。「オイシックス新潟アルビレックスBC」と「ハヤテ223(ふじさん)」の新規2球団が参加。2軍のみでしか戦うことが許されない両チームなのだが、侮れない本気度が伝わってくるのである。
そもそもファームはイースタン・リーグが7、ウエスタン・リーグが5と、それぞれ奇数の球団数。公式戦を組むのに、同日では1チームがあぶれてしまう。そんなイビツな状況を改めるために協議がスタート。そして巨人の山口寿一オーナー(66)が、球界への加盟ではなく、「参加」という議案を持ち出した。それが転じて、ファーム14球団体制が実現されたのだ。
「野球協約ではプロ野球界に新規参入する場合、30億円の加盟料を払わなければなりません。『参加』という新しい解釈なら30億円は必要ありません。結果、『多くの企業チームに興味を持ってもらえる』とした前向きな意見がある一方で、『2軍戦しか出場できない状況』を指して悲観的な声も聞かれました」(球界関係者)
実際に立候補したチーム、企業は約10団体にも上った。NPB側の面談などを経て、前述の2球団の参加が決まったわけだが、心配されるのはプロ側との実力差であろう。
「独立リーグのレベルは上がっています。今秋ドラフト会議で支配下6人、育成枠で17人の選手が独立リーグから指名されました。2巡目で徳島の椎葉剛(21)が阪神に、富山の大谷輝龍(23)がロッテに指名されています。2巡目で独立リーグの選手が2人も指名されたのは、今回が初めてになります」(前出・球界関係者)
新潟は長く独立リーグを牽引してきた。今オフには元阪神・髙山俊(30)や元広島・薮田和樹(31)ら7人のNPB経験者を獲得。ハヤテも元DeNA・田中健二朗(34)や元ロッテ・福田秀平(34)ら10人ものNPB経験者を続々と入団させた。
今から好ゲームも期待されるが、両球団はファーム戦に集中できないかもという危惧は残る。
「育成枠もあるNPBは選手のやり繰りに困りませんが、新潟、ハヤテは違います。約40人の体制でスタートするそうですが、あくまでも『参加』なので、NPB球団とのトレードはできません。年間約1億円かかる遠征費も心配です」(前出・球界関係者)
新潟、ハヤテに所属する元NPB選手は、活躍すればシーズン中のNPB球団移籍が可能となる。そうなれば両球団は戦力ダウン。せっかくNPBに協力してくれたのに、何とも不憫な状況だ。一方で明るい未来に目を向ける向きもある。
「20年にソフトバンクの王貞治会長(83)が、プロ野球16球団構想を語りました。NPB全体も賛成でしたが、その後、具体的な動きを見せていない。新潟、ハヤテがファーム戦で存在感を見せれば、球団拡大の構想も一気に加速するという声はあります」(スポーツ紙デスク)
様々な思惑が絡むプロ野球ファーム戦が、にわかに注目を浴びている。