週刊アサヒ芸能7月13日号のインタビュー記事で「芸歴35年で一度も売れたことがなく占い師に転身」した崖っぷち芸人が、まさかの脚光を浴びている。すわ、還暦前のブレイクなるか‥‥。再び直撃した。
さるベテラン芸人による「芸人を一生続けてたら、誰でも一度ぐらいは賞を取ったり、多少のブレイクはするもんなのに、たったの一度も売れていない」との触れ込みで当時、ご登場いただいたのが、ピン芸人・ギブ←(アップ)大久保(58)だった。08年にWBC世界フライ級チャンピオン・内藤大助のそっくり芸人として売れるチャンスはあったが、うまく波に乗れなかった。10年ほど前にあの「新宿の母」に弟子入りして、現在は占い師の顔もある。
それが12月6、13日の2週にわたってTBS系「水曜日のダウンタウン」に出演。にわかに注目を集めているのだ。
大久保が語る。
「突然に連絡が来たんです。以前に協力させていただいたスタッフさんから『賞レースがある』と。漫才の『THE SECOND』のように芸歴16年以上のピン芸人で競い合うというのです。よくわからなかったのですが、トントン拍子で参加が決まった。優勝賞金は100万円で、これはチャンスだと思いました。9月20日、収録現場のTBSで、他の出場者たちと『これはドッキリか』なんて話していた。でもTBSでは、10月21日が8時間生放送の『お笑いの日2023』で、夜には『キングオブコント』もある。その一環なのかとようやく信じられた次第です」
賞レースのタイトルは「S‐1グランプリ」。「シングルワン」との説明だったが、本来の企画首謀者である「水曜日のダウンタウン」内では「すべりワン」という裏テーマ。推薦芸人たちがそのエキスパートとして選んだ8人の参加芸人たちは、本気で笑いを取って優勝を目指すが、本当に勝ち上がれるのは、観客の支持が少ない方というルール。もちろん笑いを取れたか取れなかったかは、舞台に立った芸人自身も実感があるはず。にもかかわらず、観客がクスリとも笑わなかった方が勝者というわけだ。
大久保は、6日に放送された1回戦を制した。
「もちろん、本気で勝つためにやっていました。でも(対戦相手よりも)俺の方が客の反応が重かった。そもそもネタが飛んだ上、思い出すまで時間がかかってしまったのに‥‥」
本人曰く、この日に限って早口になってしまった。その結果、スタジオのダウンタウンらから一様に「何を言っているのかわからない」といった評価となってしまった。そのネタは「昭和の感覚が抜けないシリーズ」。「ナンパ」を「ハント」、「かわいい女性」を「まぶいスケ」と言ってしまう58歳の時代遅れ感を「オー、イエ〜イッ! バブリー、バブリー! ジェネレーションギャップ!」という自虐的な決めゼリフで落とすパターンだ。
ネタを披露する前に「このネタはブルゾンちえみさん、平野ノラさんに憧れて作りました」と、なぜか後輩芸人の名前を挙げていたことが気になったが、
「このネタを作ったのは5〜6年前、占いに来たお客さんだった女子高生の進言からでした。『ブルゾンさんやノラさんのようなポップなネタがいい』と。それから試行錯誤して完成させたものだからです。だったら派手にしよう、それならアフロがいいだろうと。それで元祖アフロの松鶴家千とせ師匠に断りを入れようと思ったのですが、もう亡くなっていたんですよね‥‥」
そんな渾身のネタ披露だったが、13日の決勝オンエアでも何度もネタを飛ばす大チョンボ。これはブッチ切りで優勝かと思いきや、惜しくも(?)3位に終わって、エンジンコータロー、ゆきおとこという2人の猛者の後塵を拝したのである。優勝決定後、参加芸人たちに本来の趣旨が伝えられたが、
「いやいや、安心しましたよ。しかも2位かと思ったら、ゆきおとこよりも下ですからね。『これでダメならあきらめがつく』との気持ちで出た〝賞レース〟でしたが、放送されて反響もありました。一般の方から『フレーズが面白い』『元気を貰いました』なんてツイッターで連絡をいただけたり、ライブのオファーも増えた。綾小路きみまろさんのように、レトロなネタが中年層の心に響いたらいいなと思っています」
いまだ自身の未来は占えないようだが、真のブレイクを果たせるか‥‥。