2023年は「悪質ホスト問題」が特にクローズアップされた年であった。2024年4月から売掛の廃止を目指すなど改善が進む中、注目されるのが、ホストにハマッた女性達の行き着く先である。
例えば8年前にホストクラブに通っていたという、現在35歳のAさん。当時、派遣社員OLだったが、歌舞伎町に足を踏み入れたきっかけは、友人との忘年会だった。
「新大久保で忘年会をした後、『二次会どこ行く?』という話をしながら歌舞伎町方面へと歩いていると、『ホストどうですか』と声を掛けられたんです。ホストって少し興味はあったけれど行ったことなかったので、ノリで行ってみるか、となりました。その時に声を掛けてきたのは『外販』と呼ばれるホストクラブ専門のキャッチでしたね」
ホストクラブは通常は3万円前後だが、初回料金は1時間3000円ほどで飲むことができる。そのリーズナブルさゆえに、ハマッてしまう女性は多い。Aさんが続ける。
「最初に行った店には特にタイプのホストもいなくて、こんなもんかって感じでした。でも初回料金は安いので、どうせならもっとイケメンのホストを見てみたい、と思うようになったんです。それからホストのSNSやホストクラブの情報サイトを見るようになりました」
以降、様々なホストクラブに足を運んだというAさん。SNSで見つけてひと目惚れしたのが、のちの担当(指名)ホストとなるMだった。
「ホストっぽくない普通の雰囲気に惹かれて早速、店に行ってみました。彼はナンバー入りしている売れっ子ホストなのですが、謙虚だったんですよね。何かお酒を飲むかと尋ねると『高いから大丈夫ですよ』と言ってくれたんです」(Aさん)
ホストクラブでの初回は、女性客は飲み放題だが、ホストに酒を飲ませる場合は別料金がかかる。それを遠慮したMに優しさを感じた、というAさん。その日からMにのめり込んでいく。
「最初の頃は全くガツガツしていなくて、『無理しなくていいよ』と言うんです。理由を聞くと『Aは昼の仕事だし、無理してほしくない』と。でも結局、お金を使わない客と使う客がいたら、使う方につきますよね。それで私の席についている時に彼が呼ばれて、見ると別卓の派手な格好をした女性客がシャンパンを入れていたんです。その女が勝ち誇ったようにこっちを見た時に、私も負けたくないと思ってしまいました」
実はこれ、よくある手口である。他の女性客の席につく姿をあえて目の前で見せることで、客の競争心を煽るというものだ。その日、Aさんは生まれて初めて、高額なシャンパンを入れた。(後編に続く)
(京野歩夢)