それは関根勤がまだ29歳の頃の話だった。お笑い界の師と仰ぐ萩本欽一から「声がこもっている」と指摘された。
事務所の意向で通ったボイストレーニングの先生は、男性コーラスグループ「デューク・エイセス」の初代リーダーを6年間務めた和田昭治氏。思い出しただけでも震えがくる、という怖い先生だったそうだ。合わない音程が、強い口調で叱られると余計に委縮して定まらない。ところが…。この時の様子を、YouTubeチャンネル〈関根勤チャンネル〉で、関根が振り返った。
ある日の練習曲は、140万枚の売り上げを記録した北島三郎の大ヒット曲「函館の女」(1965年)。「北島三郎になりきって」と指摘を受けたという関根いわく、
「モノマネで北島三郎になりきって歌ったわけ。自分じゃないから疑わないわけよ、サブちゃんは上手いわけだから」
この歌声に和田氏も「今日はいいですね」と絶賛だ。
イメージトレーニングで成功した話は他にもあるそうで、加山雄三とスキーに連れ立つと、
「俺についてこい。キミ、僕のマネ好きだろ。僕のモノマネで滑って来いよ」
そこで関根は「加山雄三です、加山雄三です」と自身に言い聞かせながら加山の後ろを追い、なんとか順調に滑走していたが、大きなコブを越えたところで我に返ると、
「関根勤に戻ったところで、『あああ!』って倒れちゃった」
イメージトレーニングは、何もアスリートだけのものではない。プレゼンを苦手とするサラリーマンが、流暢に話す芸能人を一時的にマネてみるのもいいかもしれない。
(所ひで/ユーチューブライター)