一般的に、正式に叙勲された騎士は、盾などに出自を明らかにする紋章を描くとされる。だが、それをあえて塗りつぶし、影として闘うのが、黒騎士ことブラックナイトだ。
実は宇宙にも、この名称がつく謎の物体が存在する。一説によれば、それはおよそ1万3000年前から存在し、極軌道(地球の両極の上空を通る軌道)近くで地球を周回しているとされる「ブラックナイト衛星」。科学ジャーナリストが解説する。
「この衛星の存在を最初に報道したのは、アメリカの日刊紙『セントルイス・ポスト・ディスパッチ』と『サンフランシスコ・エグザミナー』で、まだ人類が人工衛星の打ち上げに成功していなかった1954年のことです。アメリカ空軍が、地球を周回する謎の衛星の目撃報告を行った、という発表を伝えたものでしたが、人工衛星開発競争において旧ソ連に後れを取っていたアメリカ国内では『旧ソ連による人工衛星なのではないか』との憶測が流れるも、国民にとっての大きな関心事とはなりませんでした」
ところが6年後の1960年2月、今度は「アメリカ海軍が、赤道面から79度傾いた軌道を公転周期104.5分で周回している、暗く回転する物体を発見した」との記事が新聞紙面を大きく飾る。しかもこの物体はかなり特異な軌道を持ち、遠点は1728キロメートルと離れてはいるが、近点はわずか216キロメートルであるとして、さっそく所有国の確認作業が始まったのである。
だがアメリカの問い合わせに対し、世界のどの国からも、この物体を所有しているとの表明はなされなかった。そこで1960年5月に大気圏に再突入して燃え尽きた、コロナ偵察衛星(ディスカバラー8号)の破片が大気圏内に落ちたのではないか、と結論づけられることに。だが、話はこれで終わらなかった。前出の科学ジャーナリストが言う。
「1973年になり、スコットランドの天文学者ダンカン・ルナンが、1920年代に検出された電波信号の記録解析を行ったところ、その信号は月の近くにある探査機から送信されたものでした。しかも発信が始まったのは1万3000年以上前からである可能性が出てきたことで、世界の天文学者から驚愕の声が上がったというわけなんです」
つまりブラックナイト衛星は1万3000年以上の長きにわたり、地球を周回しながら人類を監視し続けていた、ということになる。その後、1998年に実施された国際宇宙ステーション計画「STS-88ミッション」でも、撮影された映像の中にブラックナイト衛星らしき物体があったことで、関係者の間で歓喜の声が上がったという。
「これは船外活動の間に船体から外れてしまった熱ブランケットの可能性が高い、とされてはいますが…」(前出・科学ジャーナリスト)
はたしてブラックナイト衛星は地球外生命体による地球偵察機なのか、それとも…。
(ジョン・ドゥ)