政治資金パーティーをめぐる裏金問題で、自民党は岸田文雄総裁(首相)肝煎りの「政治刷新本部」を発足させ、1月11日に初会合を開く。最大の注目点は、岸田首相が「宏池会」を離脱しなかったと批判し続けた菅義偉前首相が、特別顧問として出席することだ。
菅氏の地元の神奈川新聞によると、菅氏は周囲に「出席するからには『もう派閥はなくせ』とはっきり言う」との決意を明かしているという。
「宏池会」に異常なこだわりを見せる岸田首相や、自身も派閥「為公会」の会長である麻生太郎副総裁がどのような反応を示すか、自民党内では関心を集めている。
「宏池会」を脱会して以降、無派閥を貫いている菅氏の立場は、「清和政策研究会」(安倍派)をはじめ、各派が政治資金パーティー問題で身動きがとれない状況となった中で、強まったといえる。
ただ、党内には「派閥をなくせ」との発言に、白けた空気も漂っている。というのも、菅氏は派閥こそ持たないものの、自身に近い中堅・若手議員ら無派閥有志で作る「ガネーシャの会」があるためだ。
「ガネーシャの会」は2020年8月に安倍晋三元首相が辞任表明した後、菅氏に総裁選への出馬を求めるなど、事実上の「菅派」とみられている。
菅氏が首相時代の2021年4月1日には「ガネーシャの会」の会合が首相官邸で開かれ、坂井学官房副長官(当時)ら13人が参加した。首相だった菅氏は参加しなかったものの、「『公務』を行う官邸で、『派閥』の色合いが強い会合を開くことは異例」(朝日新聞の報道)と疑問視された。
菅氏本人はこの時、「私は承知していない」と語ったが、この言葉を真に受ける向きはほとんどなかった。そうした人物が「派閥解消」と言っても、まるで説得力を持たないのである。
(奈良原徹/政治ジャーナリスト)