自民党派閥の政治資金パーティーを巡り、ついに現職議員が逮捕される異常事態に。岸田文雄総理は政治刷新本部を設置したが、その〝トップ”に据えたのは永田町で有名な「犬猿コンビ」だった。
パーティー収入の不記載事件で、池田佳隆容疑者が政治資金規正法違反で逮捕されたのは1月7日。岸田総理肝いりの政治刷新本部が初会合を開いたのはそれから4日後のことだった。
政治部記者が解説する。
「岸田総理みずからが本部長を務め、本部長代行の茂木敏充幹事長、本部長代理の森山裕総務会長ら党の重鎮が中核になる模様。メンバー38人のうち、池田容疑者も籍を置いた安倍派の議員が10人に上り、野党やメディアから激しい反発を招いています」
党の選挙対策委員長を務める小渕優子氏も本部長代理として「政治刷新」と再発防止に取り組むようだが、
「小渕氏といえば14年に関連政治団体の不明朗な会計を指摘され、秘書2人が有罪判決を受けました。事件の過程で、証拠となるパソコンのハードディスクがドリルで破壊されていたことが報じられると、界隈では『ドリル優子』と呼ばれるまでに‥‥。証拠隠滅のイメージがついた小渕氏の就任にも大きな疑問符がつきます」(永田町関係者)
中でも最大のミステリーが、最高顧問に菅義偉前総理と麻生派を率いる麻生太郎副総裁が就いたことだ。
ジャーナリストの鈴木哲夫氏が2人の因縁を振り返る。
「安倍政権下で菅氏は危機管理を担う官房長官、麻生氏は財務大臣を務めていましたが、モリカケ問題の処理を巡って対立。19年に消費税率を10%に引き上げる際にも、軽減税率の導入でぶつかってきたわけです。派閥政治に関する議論でも、2人の意見が一致するとは考えにくい」
政治アナリストの伊藤惇夫氏も同じ意見だ。
「2人は安倍政権時代から折り合いが悪いことで知られていましたし、岸田政権になって手打ちをしたという話も聞きません。片や派閥解消、片や派閥存続で意見がまとまるわけがない。結論が出ないという“結論”を導き出すために2人を最高顧問に指名したとしか考えられません。決断を先延ばしにしようとする岸田総理の思惑が透けて見えます」
大切なのは、世間の批判をかわすための「やってる感」というわけか。
「そもそも最高顧問が2人いることに違和感を覚えますし、議論百出を印象づけるための演出とも言えます。今後の派閥政治について議論するならば、無派閥や若手の議員をもっと登用すべきです」(前出・鈴木氏)
政治刷新本部は1月中にも議論の成果を中間報告としてまとめる方針だが、前出・伊藤氏はこう釘をさす。
「リクルート事件を受けて、自民党内で政治改革に携わった身としては、『ふざけるな』というのが正直な気持ちです。『政治改革大綱』(89年)の党議決定から、『政治改革の基本方針』(92年)でルールを設けるまで3年がかりですよ。1カ月足らずで何を示せるのか。そもそもなぜ『改革』ではなく『刷新』なのか。岸田総理からは本気で改革しようという気概が感じられません」
菅氏と麻生氏の因縁バトルが注目を集めても、中身はスカスカのようだ。