岸田文雄首相が9月13日に内閣改造と党役員人事を断行したが、マスコミ各社の世論調査の結果が芳しくなく、内閣改造を評価するどころか、不支持率68%(毎日新聞)、53%(朝日新聞)と高止まりした。
この状況に、菅義偉元首相がついに動き出す、との観測が永田町で強まっている。特に今回の改造で、国民民主党の副代表を務めた矢田稚子元参院議員を、賃上げや雇用を担当する総理大臣補佐官に起用したことに「火遊びがすぎる」との声が党内で上がり、菅氏は重大な関心を示しているという。
自民、公明は連立政権を組み、維新を別動隊として使い、国政・地方選挙で野党共闘を崩し、野党の足元を崩す。特に労働組合票に頼る候補者をターゲットにする。これが安倍長期政権を支えた構図でもあり、これを作り運用してきたのは、安倍政権で官房長官を担った菅氏だった。
これを根底から覆すような首相秘書官人事と連合、国民民主党へのアプローチ。自民党若手議員が解説する。
「安倍・菅コンビが築いた基盤ではない、岸田オリジナルで衆院選挙を勝ちたいという意欲の表れと考えられます。菅さんはいい気分ではないでしょう」
菅氏周辺では、財務省を中心とした官僚重視の政権運営になっていることから、秋の臨時国会で審議される補正予算案を念頭に、政策集をまとめる動きがある。ライドシェア(一般ドライバーが自家用車を使って有料で客を運ぶ、相乗り)解禁、農協改革、ガソリンのトリガー条項の発動がなどが盛り込まれる予定だという。
仮に補正予算案がまとまった段階で岸田首相が衆院解散・総選挙に踏みきった場合、この政策集を公約に盛り込むようにし、かなわぬ場合は、1議席でも減らせば首相交代を要求する。解散しなければ来年の総裁選に向け、じわじわと攻めていく。
「最大の問題は、麻生太郎副総裁との関係だ。菅氏と麻生氏の間では『河野太郎デジタル相を念頭に、次の首相候補を育てることを優先する』との密約をかわし、互いに協力関係にある」(与党関係者)
この密約を破れば麻生氏は岸田首相側につくため、菅氏は岸田・麻生連合の「大宏池会」を打ち破らなければ、首相への返り咲きはできない。
(健田ミナミ)