「キングメーカー」と恐れられた自民党の二階俊博元幹事長(84)が最大の窮地を迎えていた。やることなすこと裏目に出ては、引退の足音もすぐそばまで迫ってきているようで‥‥。
「相手(候補)が選挙区でちょろちょろして困っているなら言ってほしい。5人、10人で押しかけて、同志をいじめたらこんな目に遭うぞと力を示そう」
9月20日、長野県・軽井沢で開かれた派閥の研修会で、こう力強く鼓舞した二階氏。ただし、領袖の檄に奮い立った者もいれば、時代錯誤の言い回しに戸惑いを覚える議員もいて、「温度差はまちまちだった」(自民党関係者)という声もある。
それもそのはず、安倍・菅両政権で歴代最長の5年にわたり幹事長を務め、絶大な存在感を発揮。が、岸田政権になって党内唯一の「非主流派」に立場が変わると、派閥の所属議員はピーク時の48人から41人まで減少。先の内閣改造でも「冷や飯」を食わされている内情を、政治部記者が説明する。
「二階派は閣僚2枠の確保を求めましたが、官邸側は『1枠』を用意。派閥幹部が反発すると、小泉龍司法相(71)と自見英子地方創生担当相(47)の初入閣が決まった。ただし、自見氏は二階氏が推していた議員ではなかったんです。もともと麻生太郎副総裁(83)と距離が近く、〝隠れ麻生派〟と揶揄されることもあり、二階派の間では『嫌がらせだろ』と、辛らつな意見も聞こえてきました」
威厳を示せなかったことで、今度は強いパイプを持つ、〝十八番〟の日中外交で巻き返しを狙うと、
「東京電力福島第一原発の処理水放出で日中関係が悪化したことで、岸田文雄総理(66)は二階氏に親書を託し、パイプ役を任せようとしました。それなのに、中国側に切り捨てられるように訪中を断られ、面目丸潰れとなったんです」(政治部記者)
党内でも求心力はすっかり落ち、今夏にはある事件が起きていた。
「麻生氏の引退説が週刊誌に書かれましたが、実は同時期に、二階氏の引退も既成事実のように永田町を駆け巡ったんです。即座に犯人捜しが行われましたが、わからないまま。二階氏は表立っては黙殺の姿勢で平静を装っていたが、血管が浮き出るほど憤怒していたとか。それよりも周囲を驚かせたのは、これまでなら『辞めるわけない』と言っていたのに、今回は怒りながらも、否定する言葉が出てこなかったんです」(自民党関係者)
揺れるドンに二階派議員の反応はシビアだった。自民党関係者が、声を潜めて続ける。
「党内では『水に落ちた犬は打て』とばかりに二階氏叩きが目立ってきた。ハナから寄せ集めのような派閥で、後継者も不在でした。引退となれば草刈り場になるのはわかっているので、水面下で各派閥への移籍を巡り綱引きが始まっている」
政治生命を脅かす逆風を浴びて、今後、ドンな決断をするのか。