岡山県のジムから出た初めての世界王者に、会場は沸き立った。1月23日のWBA世界フライ級タイトルマッチで、ユーリ阿久井政悟が王者アルテム・ダラキアン(ウクライナ)に大差判定勝ちを収め、悲願のベルトを巻いたのだ。
実はこの前の試合、ノンタイトル8回戦に登場していたのが、辰吉寿以輝。あの辰吉丈一郎の次男だ。息子の試合をリングサイドで観戦していた丈一郎は、阿久井と同じ岡山県出身。
「阿久井君の根性がすごい。初めての世界戦は恐怖もあったやろうに」
と、同郷の世界王者誕生に目を細めた。岡山県出身の世界王者は、自身以来のことだった。
翻って次男の試合ぶりはというと、スピードと回転の速いショートパンチを相手に浴びせて試合を主導し、2-0の判定勝ち。それでも丈一郎の評価は手厳しかった。
「(日本ランク返り咲きの)モチベーションは持たないと飽きられるよ。辰吉の名前だけじゃ」
ここでふと思うのは、その丈一郎はまだ「引退していない」ということだ。最後にリングに上がったのは、2009年3月。もう15年近くが経つ。いったい、どういうことか。
「本人が引退を拒否しているからです。これまで3度、WBC世界バンタム級王者になりましたが、もう一度、WBC世界王者になることを諦めていない様子です」(ボクシング関係者)
「所属」する大阪帝拳ジムからはもう試合を組まないと通告され、JBC(日本ボクシングコミッション)も、既に失効したライセンスの発行を否定している現状で、だ。
53歳の今もなお、トレーニングを続けているという「浪速のジョー」。JBCライセンスを持たないことで、国内での試合はできない。となれば、海外で…。
いまだ無敗の次男が大きな目標に向けて進む中、はたして「現役ボクサー」を続ける父は本当に試合を組むことはできるのか。