1月20日、「TOKYO SHOCK BOYS」として世界も魅了した過激パフォーマンス集団「電撃ネットワーク」のリーダー・南部虎弾が脳卒中で急逝した。72歳だった。〝鬼才芸人〟が遺した破天荒な逸話を振り返りたい。
布団圧縮袋に入って空気を抜いたり、耳たぶに紙幣をホチキスで止めたりと、奇想天外な芸を披露した集団のリーダーは、その生き様もぶっ飛んだ芸人だった。
そもそもは劇団「テアトル・エコー」の養成所に入所。しかし、いきなりやらかした。生前、週刊アサヒ芸能記者に南部がこう明かしている。
「建物の1階にある声優さんの事務所で『ここの養成所の先生っていうのは、飯が食えないから教えて飯食ってんだよ』って話してたら、隠しマイクがあった(笑)。『君はいらない。さようなら』って」(以下、表記なしは南部)
その後、黒澤映画「影武者」に端役で出演したのち、「テレビで売れたい」とストリップ劇場にコント赤信号を訪ね、芸人を目指す。
のちに3人組となったダチョウ倶楽部(当初は「キムチ倶楽部」)の初代リーダーだったことは有名だが、やはり〝はみ出し者〟の真価を発揮してしまう。
若手芸人たちがゲストの講師に質問して指導を仰ぐバラエティー番組「ひょうきん予備校」(フジテレビ系、86~87年)に出演していた時のことだ。
「初めから完全にダウンタウンを売り出すための番組で、負けてられないなって。タモリさんが来た時に『お笑いらしいことを全然やっていないのに〝お笑いの帝王〟と呼ばれてるのはおかしくないですか?』って聞いたの。そしたら『君、面白いね。どんどん失礼なこと言った方がいいよ』って言われた」
ところが、誰もが寛大な心で接してくれるわけではなかった。
山本晋也監督がゲストの回で「監督って呼ばれてますけど、どんな作品があるんですか? エッチな作品しか知らないんですけど。どうしたら監督になれるんですか?」とぶつけたのだ。
「『おめえ、面白いこと言うじゃねえか。トイレ来い、コノヤロー!』って。『俺はケンカが強かったんだ。ケンカが強いと監督になれるんだよ!』って凄まれた部分は全部カット(笑)」
続いてハナ肇がゲストの際、いつものように若手たちが番組の校歌をダラダラと歌ってから出迎えた。するとハナが真っ赤な顔をして教室に入ってきて激怒。
「何、考えてんだ! 俺たちがどうやってテレビを盛り上げてきたと思ってんだ!」
「俺、手を挙げて『ハナさんって意外と真面目なんですね』って言っちゃった。そしたら『コンニャロー! どこの事務所なんだ?』って。そのあとすぐ、家でテレビを付けたら、俺を除いた3人だけでテレビに出てたんですよ(笑)」
とはいえ、転んでもただでは起きない南部だ。電撃ネットワークを結成するや、
「消火器を浴びたり、正露丸を一気飲みするネタを思いついたら、安全かどうか、その製品を作ってる会社に電話するんです。『子供が間違えて正露丸を全部飲んでしまって』って話したら『今までにそんな飲んだ人はいません。至急、会議しますので』とか言われたから『大丈夫です』ってガチャッと切っちゃった(笑)」
ところで南部が死去した直前には、盟友のエスパー伊東(享年63)も亡くなっている。南部の知人が2人の生前エピソードを明かす。
「エスパーが同じ団地に住むチンピラに因縁をつけられ、約2年間にわたって1000万円以上を恐喝されていたことがあった。彼の身を案じた南部さんは『お前をいじめる奴は誰であれ許さん。俺が話をつけてやるから、どこにいるか教えろ。俺が守ってやる』って。あの俠気は忘れられません」
〝不死身の男〟に合掌。