プロ野球春季キャンプは注目ルーキーや1軍クラスの主力に視線が集まるが、2軍キャンプもまた面白いのだ。
ヤクルトは2軍の春季キャンプが2月5日に、西都原運動公園(宮崎県西都市)で始動した。この日の天気は雨のち晴れ。宮崎で第1クールを過ごした他球団同様に、キャンプ初日から室内練習場での基礎中心のメニューに大粒の汗を流した。とりわけバテバテぶりを隠せずにいたのが、新人選手だ。
午後の練習前、ドラフト4位ルーキーの鈴木叶にキャンプ初日の感想を聞けば、メンタルの消耗をポツリ。
「練習の強度以上に疲れた気がします。先輩選手もたくさんいますし、ファンの方も見に来ていただいているので、緊張しちゃっているのかもしれません」
そのまま自らを奮い立たせるようにバットを握り、打撃練習に向かっていった。
少しピリついたキャンプを過ごす他の新人選手と打って変わり、トレーナーに指示された個別メニューを消化していたのが、ドラフト1位の西舘昂汰(写真)である。球界関係者が語る。
「上半身のコンディション不良で、ノースロー調整を余儀なくされています。走り込みやストレッチなどのメニューを、ひとりで黙々とこなしていますね。本人としては春季キャンプ中にブルペンに入りたい意向があるようですが、キャッチボールを含めた、ボールを用いた練習の解禁はトレーナーの判断に委ねられている。つまるところ、本人もいつから投げられるようになるのか、知らされていないわけです」
筑陽学園3年時に春と夏の甲子園に出場。東都大学野球リーグ2部に属する専修大学へ進学すると、最速152キロのストレートとスライダーを武器に通算防御率1.69を記録した、文字通りの金の卵にほかならない。
「188センチの長身から力感のないフォームで、キレのある直球を放ります。その軌道はナチュラルにスライドする『真ッスラ』の球質。昨季、セ・リーグ史上唯一の新人王とMVPを同時受賞いた阪神の村上頌樹も操る魔球です。通常のスライダーよりも打者の手元で鋭く曲がる上、時には変化しないため、打者泣かせ。球団は未来のエース候補として、無理をさせずにじっくり患部を治す方針のようです。ちなみに、同じ姓で巨人ドラフト1位の西舘勇陽の直球は、シュート回転する『真ッシュー』と呼ばれるもの。とかくシュート回転はマイナスに語られがちですが、わずか1.1秒のクイックフォームからの最速155キロの直球ならば、武器になりうる。先輩の大勢やロッテ・佐々木朗希と似た球質です。同じ苗字でも、直球の性質は正反対なんです」(前出・球界関係者)
セ界の西舘同士のマッチアップを叶えるためにも、万全の状態でシーズンを迎えてほしい。