もはや「巨人ブランド」は通用しないのか。巨人・阿部慎之助監督が、ヤクルト・田口麗斗の古巣復帰消滅に、ため息混じりだという。
田口は今季、高津ヤクルトの守護神を任され、50試合に登板して3勝5敗33セーブ6ホールド、防御率1.86の好成績をマークした。2013年のドラフト会議で巨人に3位指名されて入団したが、2021年の開幕直前、広岡大志との1対1の交換トレードでヤクルトに移籍した。
その田口が国内FA権を取得。今季の巨人は守護神の大勢が長期離脱し、先発と中継ぎ陣も手薄に。3年連続V逸の巨人にとっては、チームをよく知る田口の呼び戻しは最優先事項のひとつだった。それだけにフロント、阿部監督以下、首脳陣の落胆ぶりはかなりのものだという。スポーツ紙遊軍記者は次のように話す。
「来季、大勢が戻ってきたとしても、故障明け。1年を通じて使える保証はありません。阿部監督は信頼できるストッパーをもうひとり、欲しかったはず。そのターゲットは楽天・松井裕樹と田口だった。松井の海外FA権行使は想定内だったとしても、田口はかつて巨人でプレーしていただけに、条件次第では出戻ると計算していた。ショックは大きいでしょうね」
かつては広島から出戻った長野久義のように、トレードや人的補償などで他球団のユニフォームを着た人間も、巨人が声をかければ、
「喜んで戻ってくる選手は多かった」(前出・遊軍記者)
それは巨人ブランドであり、引退してもテレビ解説者や野球評論家の仕事を世話してもらえたからだが、今はそれも難しい時代になっている。在京テレビ局関係者も、
「地上波の放送が少なくなり、今はCS放送が中心になっているわけですが、それでも解説者の数は飽和状態。巨人の選手だったというだけでは、仕事はないですよ。このご時世、たいした成績を残していなくても、メジャーでプレーした経験の方が十分、売りになります」
もはや「巨人は球界の盟主」という言葉は、死語に近いかもしれない。
(阿部勝彦)