社会

「さん付け」呼称で刑務所内新秩序に賛否両論

「やり直し、聞こえんか! ケツの穴を広げて見せぇ、言ってるんじゃ!」─身体検査をおざなりにしたことで、刑務官に警棒で殴られるのは、北大路欣也(81)扮する山中正治受刑者だ。これは73年公開「仁義なき戦い 広島死闘篇」(東映)のワンシーンだが、令和に入って刑務所事情が激変しようとしている。

 22年に発覚した名古屋刑務所内の暴行事件。受刑者3人への度重なる虐待行為で、元刑務官13人が書類送検されたが、事件の余波は全国に拡大した。社会部記者が解説する。

「法務省が再発防止策として打ち出したのが、受刑者の呼び方を『さん付け』に改めるというもの。名古屋刑務所では『懲役』と呼んでいたことが、刑務官の思い上がりや差別意識を招いたとして、まずは呼び名から改善していくというもの。今年4月から刑務所内の雰囲気は一変するでしょう」

 刑務官と受刑者が「さん付け」で呼び合う時代が来るとは‥‥。冒頭の映画のセリフも令和の流儀にならえば、

「山中さん、お尻の穴を見せていただけませんか?」

 こんなソフトな語り口になるのだろうか。

「刑務官は絶対的な存在。それが受刑者に敬語なんか使ったら、塀の中の秩序が乱れますよ」

 こう疑問を呈するのは、「サラリーマン、刑務所に行く!」(サンエイ新書)などの著書で知られる作家の影野臣直氏。自身の服役経験を踏まえてこう語る。

「刑務官の下で受刑者はみな平等。刑務作業中によそ見をしたり私語を交わそうものなら、組長でもチンピラでも『何やってんだ!』と厳しく注意されます。その緊張関係がなくなってしまうと、許可なく勝手に話をする不正交談が横行。結果的に受刑者の犯歴などの〝個人情報〟がダダ洩れになって、イジメにつながる恐れも出てきます。性犯罪者などは格好のターゲットになりますからね」

 つい先日、関東某所の刑務所を出所した元受刑者のAさんも同意見を述べる。

「07年に廃止された監獄法の影響か、年配の刑務官は番号で呼ぶことが多かったですね。『おい〇〇〇番!』と怒鳴られるたびに、自分は服役囚だって実感していましたが、それが『さん付け』では、勘違いする奴が出てきてもおかしくない。おそらく現場ではなし崩し的に『おい!』とか『お前さん』などお茶を濁すことになるでしょう」

 処遇の変更は呼称だけではない。2月からは、女子受刑者に認められていたバスタオル、リンス、化粧水の3点が男子でも購入できるようになったのだ。

「冬季の入浴は週2回ですが、バスタオルはありがたい。特に寒い日は、凍えながら小さいタオル1枚で頭から足先まで拭いていましたから。自分がいた舎房は丸坊主が6割、五分刈りが2割。中髪が認められるのは仮釈放の2、3カ月前ですし、『リンスinシャンプー』が使えたのでリンスはそれほど普及しないのでは‥‥」(前出・Aさん)

 前出・影野氏はバスタオルの解禁が、貧富の差の拡大につながると懸念する。

「名前が記入できない黒い生地や柄モノは使用不可とするなど、制約はあるものの、地位があるヤクザはここぞとばかりに高級ブランドのバスタオルで財力をアピールするでしょうね」

 新しい試みが虐待防止につながるか。「罵声なき更生」に期待したい。

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