社会

被災地を無視した震災復興予算の流用実態に迫る(2)

 12年秋には国会で、当時の野田政権に対して多くの流用問題が指摘された。ある現職国会議員が振り返る。

「農水省では調査捕鯨の支援に使用されました。当時の民主党・農水大臣は『鯨肉が石巻周辺に供給されている』と苦しい答弁をしましたが、反捕鯨団体である『シー・シェパード』の対策にも使用されていたのです。また、法務省では、刑務所で使用するミシンなど洋裁機器の購入に使用され、法務大臣は『原発の防災服や仮設住宅のカーテンの増産受注がある』と答えました」

 文科省において、復興予算は核融合エネルギーの研究費や国立競技場の補修に流用され、財務省では、なんと東京などの税務署の改修費にも使われていたのだ。

「経産省は『定置用リチウムイオン蓄電池導入支援事業』に使用していました。しかし、内情は計画停電対策で大容量の電池を購入した家庭・事業所などに購入費の3分の1を補助する事業です。しかし、計画停電は12年度には行われていなかったのです」(前出・国会議員)

 有名無実の予算流用は中央省庁だけにとどまらなかった。東京都や千葉県では、駅やバス停を外国語表示にする事業にさえ復興予算が使われたのだ。こうしたことの批判もあり、民主党は政権の座から陥落した。しかし、安倍晋三総理(59)に変わったあとも次々と流用が明らかになっていったのだ。政治部記者が語る。

「特にひどかったのは、厚生労働省が担当する雇用対策事業でした。この事業で雇われた約6万7000人のうち被災者はたった3%ですが、数字ばかりでなく内容もひどいものでした。約2000億円もの費用が投じられた事業の中で、鳥取県では『ご当地アイドルのイベント』に使われ、鹿児島県では『ジャンボタニシの駆除』に使用されました。『ウミガメの保護観察』と名付けられた事業もありましたが、実態はただウミガメの数を数えるだけのものでした」

 兵庫県では神戸マラソンの警備員の雇用や、ニホンザル被害を防ぐための監視員などとしても流用されている。調べると、あいた口が塞がらない数々の事業があることがわかる。いまだ復興が進まない被災者たちにとっては、怒りで暴動が起きてもおかしくない内容だと言えよう。

 昨年5月9日には、ついに菅義偉官房長官(65)が会見でこう激怒したのだ。

「復興の基金は復興のために使うのが政府の基本方針だ」

 流用問題が発覚した場合は、予算の執行停止も辞さないということだが、検査院の調査ではすでに1.3兆円余りの復興予算が被災地とは無関係に使用されてしまったことが明らかになっている。安倍総理はこのケジメをどうつけるのか。

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