芸能

嗚呼、素晴らしき「80年代テレビ黄金時代」を語り尽くそう!〈ブッチー武者〉「ひょうきん懺悔室」は朝8時から深夜まで待機

 80年代を丸々席捲した伝説のバラエティー番組「オレたちひょうきん族」(フジ系、81〜89年)で、懺悔の神様としてブレイクしたブッチー武者(71)。笑いのパラダイスだった土曜の夜の舞台裏を語る。

 神様に許しを請うて、認められなければ水を浴びせられる名物コーナー「ひょうきん懺悔室」の出演は、ひょんなことからだった。

「当時、コンビを組んでお笑いスター誕生に出演していたんですよ。番組に携わっている制作会社の人に『ひょうきん族』からオファーがあって、その話が僕のところに回ってきた。後からわかったのですが、暇でギャラが安いヤツを探してたって(笑)。仕事の内容も聞かされないまま、フジのディレクターだったビビンバ荻野さんの元を訪ねたのを覚えています」

 記念すべき初の懺悔のターゲットだが、実はお笑い芸人ではなかった。

「俳優の荻島愼一さんでした。タケちゃんマンのコーナーでゲスト出演してセリフが飛んでNGに。その時はまだ手探り状態で、ディレクターの判断で『○』という結果になりましたね。1週目で終わると思っていたんですけど、1カ月続けたところでレギュラー化が決定。それ以降は、僕が自由に○と×を決めて出すスタイルになりました」

 ひょうきん族は「タケちゃんマン」をはじめ、多くのコーナーで成り立っていた。当初は懺悔に値するNGが出るたび、その都度、コーナーの収録を止めて〝懺悔〟を行っていたという。

「朝の8時にスタジオ入り。メイクをして着替えて、その格好のままずっと待っていなきゃいけなかった。いつ出番が来るかわからないですから、僕だけはすべての収録が終わる深夜までずっと待機でした」

 ひょうきんメンバーはもちろん、人気タレントたちにも水を浴びせた。

「いちばん多く×を出したのは、(西川)のりおさんと(島田)紳助さんかな。天地真理さんの時は、判定する短い間、ギリギリまで迷ったんですが、水を被ってもらいました。冬場は湯気が出ない程度のお湯を使っていたので、天地さんは『キャー! でも温かーい』ってリアクションでしたね。×を出すことが多いんだけど、ファンだった荻野目洋子ちゃんの時は、いつもより食い気味に○としました。お人形さんみたいでかわいかったので仕方ないですよ(笑)」

 水をかける側だったブッチーだが、実は水を被るハメになったことも。

「山田邦子さんがひょうきん終わりで次の現場に行かなきゃならなくて、事前に○って指示があったの。本番でその通りにしたら、なぜか水が落とされて邦ちゃんがズブ濡れに。慌てて手を×に直したんだけど、時すでに遅し。NGってことで、邦ちゃんが神様になってボクに×を出し、水を被ったことがありました。あれは僕をハメるドッキリだったんじゃないかな(笑)」

 番組の主役・ビートたけしとの会話も忘れられない。

「夜遅くに帰ろうとしていたら『後ろ空いてんの? 来ないか?』って飲みに誘ってくれました。その席で、笑いとは何かという質問をさせていただいたら『お笑いなんてのはガンジーだよ。無抵抗の抵抗だよ』って」

 ところで、裏は怪物番組「8時だョ!全員集合」(TBS系、69〜85年)である。

「途中から懺悔コーナーは番組の最後という構成に変わった。すると全員集合のエンディングと被る時間帯なんですけど、毎度同じ映像が流れるあちらよりも懺悔室が視聴率で上回るようにもなった。最初は数万円だったギャラも10倍にまでなって、営業でずいぶん稼がせてもらいました」

 とはいえ、私生活で人気を肌で感じることはなかったそうだ。

「メイクにカツラだったから、素顔では街で気づかれることがなかったんですよ。全然モテなかった」

 一方で、この役回りは家族にも影響を及ぼしたという。

「息子が小さい時、『お父さんの職業は?』って聞かれて『神様です』って答えていたんですよ。そしたら『絶対ウソ! 変だ』っていじめられたらしい。そんな息子も社会人になって『お父さんの名前を出したら営業先で打ち解けるのが早かった。利用させてもらってるよ』だって(笑)」

 結局、ひょうきん族には7年間出演。14年から、劇団を立ち上げて芝居も行っている。

「介護に疲れ果てて、認知症の母親を殺めてしまった事件が実際にありまして、それをベースに芝居を作りました。絶対に風化させてはいけない事件だと思ったんです。結果、今は介護関係者との輪が広がっています」

 ひょんなことから人気者になった懺悔の神様は、慈悲深い視点で、社会問題に取り組んでいるようだ。

ブッチー武者:77年頃、レオナルド熊に弟子入り。お笑いコンビ「アッパー8」で「お笑いスター誕生!!」に出演した。その後、「オレたちひょうきん族」の「懺悔室コーナー」で懺悔の神様としてブレイク。14年に劇団ZANGEを旗揚げし、認知症と介護をテーマにした舞台「生きる」を毎年2回公演している。新宿・歌舞伎町にバー「女無バー」を出店し、もう27年になる。

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