第1位 草燃える(79年)/ 第2位 真田丸(16年)/ 第3位 花神(77年)
松村 僕のベストワンはやはり『草燃える』です。平家の時代に「乱」を起こそうとした源頼朝と北条政子の人生がすごくよかった。大河ドラマを見てきて「乱」っていうのは、鎮圧されるから「乱」なんだと気がつきました。「藤原純友の乱」「平将門の乱」や、自民党の「加藤の乱」とか。頼朝も乱を起こしたけど、その後、勝ったので「乱」ではなくなった。源氏の時代になると、平家が逆らったことのほうが「乱」と呼ばれることになるんですね。僕のおじいさんが言ったように。
河合 歴史は勝者によって作られるということですね。
松村 第2位の『真田丸』は特に犬伏の別れのシーンが好きですね。真田昌幸の草刈正雄さんが「源三郎、源次郎、よーく聞け。我らこれより徳川と縁を切る、とはいえ、豊臣につくわけではない。真田はどちらにもつかん」。すると大泉洋さんの源三郎=信幸が「そののちはどうなされます」、昌幸は「世は再び乱れる、それを見計らってわしは一気に甲斐と信濃を手にいれる、どうじゃ」。すると堺雅人さんの源次郎=信繁が「はたして父上のお考えどおりになりましょうか」と悩む親子が、その後別々の道を選ぶ。感激しましたねえ。
河合 関ケ原の戦いを前にして、真田昌幸、信幸、信繁(幸村)の3人は、下野(しもつけ)犬伏(場所は異説あり)で、兄の信幸は自ら徳川に付き、昌幸と信繁が豊臣に付くことで、どっちが勝っても真田家が生き残る道を提案するわけですね。
松村 3位は『花神』ですね。幕末から明治の大村益次郎が主人公ですけど、物語の構成というか、主役の継投も『真田丸』に似ています。『花神』では吉田松陰が先発して、中継ぎに高杉晋作、そして最後に抑えで大村益次郎というふうに、主役が少しずつ交代していきます。『真田丸』では父親の真田昌幸が最初の主役で、お兄さんもいて、弟の幸村(信繁)がトータルには主役なんだけど、この三位一体みたいな構成を、三谷幸喜さんは『花神』の法則だとおっしゃっていましたね。
松村邦洋(まつむら・くにひろ)1967年、山口県生まれ。太田プロダクション所属。ビートたけしや掛布雅之など、従来にないものまねで一躍人気を博す。大河ドラマの役者のものまねを織り込んだ歴史知識を披露するなど、バラエティー、ドラマ、ラジオで活躍中。著書に『武将のボヤキ 松村邦洋のお笑い裏日本史』(武田ランダムハウスジャパン)など。YouTube「松村邦洋のタメにならないチャンネル」好評配信中。
河合敦(かわい・あつし)1965年、東京都生まれ。早稲田大学大学院博士課程単位取得満期退学(日本史専攻)。多摩大学客員教授。早稲田大学非常勤講師。歴史作家・歴史研究家として数多くの著作を刊行。テレビ出演も多数。主な著書:『早わかり日本史』(日本実業出版社)、『大久保利通』(小社)、『日本史は逆から学べ〈江戸・戦国編〉』(光文社知恵の森文庫)、『繰り返す日本史 二千年を貫く五つの法則』(青春新書)など。