メジャーリーグ移籍ゴリ押し直訴でイメージダウンを招いた日本球界の至宝右腕をめぐり、観客からも「注文」がついている。屈指のスター性を秘めた球界最速投手だけに、ファンサービスも重要なのだが、それを阻む動きが止まらないのだ。その典型的な「事件」が起こったのは、練習試合でのことだった。(2024年2月28日配信)
千葉ロッテの佐々木朗希が今季初の実戦登板。フォークとストレートだけで1回を1安打無失点に抑えた。
2月25日、韓国ジャイアンツとの練習試合に登場した佐々木は、先頭打者へ154キロを投げると、改良版フォークで空振り三振に斬った。2人目には二塁打とされたが、後続を三邪飛、遊ゴロと打ち取った。令和の怪物は「ケガなく投げられてよかった。自然体で投げてどう課題が出るかを感じたいと思った」と語った。
会場の沖縄県糸満市西崎球場は朗希フィーバーに沸き、開場した11時にはゲート前で約500人が長蛇の列を作った。熱気に包まれたが、そこに水を差したのが球場サイドの対応だった。佐々木が試合前に練習する様子などは、全てシャットアウト。観客からは「佐々木をもう少し近くで見たかった」「ブルペンを立ち入り禁止にする必要ある?」「こんなこと初めて」「なぜ見せてくれないのか」との声が漏れていた。スポーツライターが解説する。
「佐々木の特別待遇に、メディアやファンは不満を募らせています。ただでさえ早期のポスティング要求によって悪役イメージがついてしまっているのに、対応まで悪ければますます悪評が広がり、佐々木にとっても損になるだけです。佐々木自身が悪いわけではありませんが、もう少しファンサービスをしたら、印象は変わってくると思います」
佐々木は野球ファン以外への認知度が低いといわれるが、こんな理由もありそうだ。
「球団が囲い込みをしているのか、相変わらずファン対応やメディア対応は限られた場だけ。人間性や意外な一面、考えていること、生活ぶりなどがほとんど見えてこないため、ファン獲得は予想以上にうまくいっていない。佐々木を守ることばかりを考えている広報下手なロッテには、宝の持ち腐れですよ」(前出・スポーツライター)
球団が大物選手の扱いに慣れていないだけなのか。これだけの逸材を活用できないとは、ファンにとっては淋しい限りである。
(田中実)