「昨年暮れ、残念でしたが長い歌手人生に終止符を打ちました。苦しい時も、楽しい時も、心の支えになったのは、皆さんからの声援でした」
昨年12月30日に他界した八代亜紀さん(享年73)のお別れの会「ありがとう…これからも」が3月26日、東京都大田区の片柳アリーナで開かれた。五木ひろし、山本譲二、坂本冬美、小林幸子、高見沢俊彦といった歌手仲間やファンなど3000人が参列したこの会は、ステージ復帰を熱望していたという思いを汲み、八代さんの楽曲が流れるコンサート形式で開催された。
冒頭のセリフは誰あろう、八代さんの肉声だ。ん、どういうことだ、と思えば、彼女の声をもとに生成されたAI音声だった。
ラストでは、スクリーンに笑顔でピース姿の八代さんの写真が映り、
「ありがとうね、バイバイ」
という八代さんの温かみのある音声が流れると、客席から割れんばかりの拍手が鳴り響いたのだった。
生前の肉声と聞いて思い出すのは、2011年4月21日に55歳の若さで亡くなった元キャンディーズの田中好子さん。4日後の25日に青山葬儀所で営まれた告別式では、本人のラストメッセージとなる約3分20秒の肉声録音テープが流れ、弔問客の涙を誘った。
「映画にもっと出たかった。テレビで、もっと演じたかった。もっともっと、女優を続けたかった。お礼の言葉をいつまでも、いつまでも皆様に伝えたいのですが、息苦しくなってきました…」
八代さんは自身のYouTubeチャンネル〈【公式】八代亜紀ちゃんねる〉で、次のように語っていた。
「コンサートやってて、サヨナラって満場の拍手の中で緞帳がダーッと下りて、(スタッフの)みんなが『お疲れ様』って言ったそこで、スッと横になって『ありがとう』って死んでいきたい」
ファンもまた、もっともっと八代さんの歌声が聴きたかったに違いない。
(所ひで/ユーチューブライター)