つい最近、ロシアの独立系メディア「インサイダー」が「衝撃的な事実」を明かした。世界各国でアメリカの外交官らが「ハバナ症候群」と呼ばれる原因不明の健康被害を訴えていた問題について、プーチン大統領率いるロシア軍参謀本部情報総局(GRU)が「秘密音響兵器」で攻撃していた可能性が極めて高い、と報じたのだ。
一連の事実は、アメリカCBSテレビのドキュメンタリー番組「60ミニッツ」と、ドイツのニュース雑誌「シュピーゲル」の共同調査で明らかになったもの。
報道によれば、在外アメリカ大使館の外交官、職員、諜報部員らを狙った攻撃現場付近で、GRUに所属する「29155部隊」工作員の姿が目撃された。この秘密部隊の複数の幹部が、秘密音響兵器開発の論功行賞として、異例の昇進を遂げていたというのだ。
ハバナ症候群は、2016年にキューバの首都ハバナにあるアメリカやカナダの大使館の外交官らがめまい、吐き気、頭痛、聴覚障害などの健康被害を訴えて問題となった、謎の突発性シンドロームだ。
同様の健康被害はドイツやジョージア(旧ソ連構成国)にある在外アメリカ大使館でも報告されている。アメリカに敵対するキューバやロシアの関与が疑われていたが、2023年3月、アメリカ国家情報長官室は「外国の敵対勢力が関与している可能性は非常に低い」との調査結果を公表していた。
それが今回の衝撃報道によって、完全に覆されたことになる。
問題の音響兵器は、マイクロ波と超音波によって脳細胞の損傷や内耳の障害などを誘発する秘密兵器とされ、「インサイダー」は「攻撃はアメリカの諜報部員らの無力化を狙った可能性が高い」と報じている。
ロシアのペスコフ大統領報道官は「根拠のない中傷だ」と報道内容を即座に否定したが、もはや疑惑は事実の域に達しつつある。ロシアの諜報活動に詳しい専門家も、次のように指摘している。
「ハバナ症候群の被害者らは、秘密音響兵器による攻撃の前後に29155部隊の工作員らの姿を目撃しており、それらを写真に収めて同部隊の関与を特定しています。また、GRUの傘下にある軍事医学アカデミーが、秘密音響兵器による健康被害をめぐる臨床研究を秘かに進めていたこと、さらには29155部隊の主要幹部らが、秘密音響兵器の開発契約をクレムリン(ロシア大統領府)と交わしていたことなども明らかになっている。一連の攻撃が独裁者プーチンの仕業であることは、誰の目にも明らかなのです」
ちなみに、ハバナ症候群による被害者は、少なくとも数百人に上るとされている。
(石森巌)