衆院3補欠選挙で全敗しても、今の自民党は誰も責任を取ろうとしない。選挙責任者である小渕優子選対委員長はもちろん、9月の総裁選出馬をうかがう茂木敏充幹事長も岸田文雄首相(総裁)と袂を分かつ機会ともいえるが、このまま居座るつもりのようだ。
岸田首相は5月1日からの外遊を前にした4月30日、記者団に対し、こう語った。
「党総裁として課せられた課題に取り組み、結果を出すことで(総裁としての責任を)果たしていかなければならない」
「モテキング」こと茂木氏を更迭し、態勢立て直しを図ることも選択肢にあろう。それほど両者の関係は最悪で、ともに総選挙を戦うような雰囲気ではない。
だが、ここで茂木氏に辞任を求めれば、責任を取るべきは岸田総裁本人だと、逆襲されるおそれがある。自民党内では政治資金の裏金事件で、清和政策研究会(安倍派)や志帥会(二階派)の幹部を処分した。宏池会(岸田派)の会計責任者は起訴されながら、会長だった岸田首相本人はお咎めなし。そうした処遇への不満がくすぶっているのだ。
岸田首相周辺では、9月の総裁選で再選を果たすためには、6月に衆院の解散・総選挙に打って出ないと不出馬に追い込まれる、との声がある。一方では、3補選全敗でそれも難しい、との見方が広まりつつある。そこで解散の代わりに、6月の通常国会閉会後に内閣改造・党役員人事を断行し、茂木氏を交代させようという意見もあるのだ。
改造によって、河野太郎デジタル担当相だけでなく「小石河陽子」の一角である小泉進次郎元環境相、石破茂元幹事長も閣内・党幹部として取り込み、総裁再選に向けた態勢を整えようとの思惑だ。そのためにも、茂木氏を6月まで残留させようというわけである。
今のところ「岸田降ろし」は起きていないが、ゴールデンウイーク明けには「ポスト岸田」に向けた動きが活発になることが予想される。
(田中紘二/政治ジャーナリスト)