日本の税金の高さや進む円安を受けて、海外へと移住する人が増えている。特に人気が高いのはマレーシア、タイなどの東南アジアだ。
ひと昔前であれば物価も安く、定年後やアーリーリタイア組の移住先として定番だったタイ。ところが今、大きな変化が起きている。
「正直、いいことばかりではありません」
と語るのは、タイに住んで3年になる男性Aさんだ。早期リタイアしてタイに移住したが、現在は学生ビザを取得している。タイではリタイアメントビザ(ノンイミグラント)の取得は満50歳以上、というのが条件だ。
現在48歳のAさんは、語学学校に通いながらノンイミグラントビザ(学生ビザ)を更新し、タイに住み続けている。Aさんが言う。
「学生ビザの更新は年々、難しくなってきているようです。若い人の中にはタイでの更新が難しく、ラオスまで行って取得する人も多いですね。それでも1年から2年が限界です。先日、私も一時帰国して再度、学生ビザでタイに入国しようとした際に、入国審査で止められました」
入管にタイ語で質問をされ、どうにかAさんは入国できた。しかし、Aさんの知人はビザを持っているにもかかわらず、日本に強制帰国させられたという。Aさんが続ける。
「知人が学生ビザでタイに入るのは2度目でした。同じようにタイ語で質問された際に、うろたえてしまったんです。その結果、『語学学校に通っているのにタイ語を話せないのはおかしい』と別室に連れて行かれ、そのまま強制帰国となりました」
なお、タイの語学学校ではそうしたケースに備え、学校に電話すれば対応してくれるのだが、Aさんの知人はそれすらできないほど戸惑ってしまったというのだ。Aさんがさらに続ける。
「最近、ノマドワーカーとしてタイに長期滞在しながら、リモートで仕事をする若者が増えています。しかし、現地採用ではないため、結局は観光ビザか学生ビザでしか入国できません。中には入国時に賄賂を要求されるトラブルに見舞われた人もいるようです」
将来的にタイに移住したいのであれば、50歳になってリタイアメントビザを取得するまで待つのが最善の手だろう。しかし若い人の中には、日本からリモートで仕事をしたり、YouTuberとしてタイでフリーランスの活動を展開する人もいる。
日本のメディアではしばしば海外移住が推奨されているが、公式な手続きを取っていても、実際には「裏ルート」とみなされて入国できなくなることもある。Aさんは、
「移住のいい面だけを鵜呑みにしない方がいい」
と警告するのだった。