山下智久主演の水10ドラマ「ブルーモーメント」(フジテレビ系)に、海外アニメおたくが大盛り上がり。なんとも意外な展開になったのは、6月5日の放送だった。声優で俳優の津田健次郎が声のみでサプライズ出演したからだ。
それは津田が「全速前進!」というセリフを発した瞬間だった。このセリフは今や、世界市場1800億円といわれるカードゲームを誕生させた人気アニメ「遊☆戯☆王」シリーズで津田が演じた、海馬瀬人の名セリフを意識したものだからだ。
「ブルーモーメント」ではヒロイン役の出口夏希が、中国モデル出身ならではの北京語を話すシーンがあり、台湾や中国のアニメファンも、津田の名言復活にすかさず反応した。
最終回に向けてストーリーが大きく動いたこの日、後半にも見せ場が訪れた。土石流が「ある地点」に迫り来る。そこに登場したのが、警察班統括責任者の橋本じゅんだった。
制服こそ違えど、昨年夏クール、テレビ朝日で放映されていた木曜21時のイケオジドラマ枠「ハヤブサ消防団」での分団長を彷彿させる橋本の登場に、安堵させられたのだった(実際には、視聴者を裏切るハードな展開が待っている)。
ちなみに津田も前クール、同じ木曜21時のドラマ枠で、反町隆史主演「グレイトギフト」に、野心家の心臓外科医として登場している。今期の木曜21時枠は、木村拓哉主演の「Believe-君にかける橋-」。それまでの渋いベテラン俳優による群像劇から、キムタクの周りを天海祐希や北大路欣也、竹内涼真など超主演級の俳優陣で固める方針転換に打って出た。
そのせいか、初回こそ世帯平均視聴率を2桁マークしたものの、その後は9%台と失速。事件の黒幕に迫る6月6日の第7話の視聴率は9.4%と、同ドラマの最低視聴率を叩き出した。
ネット掲示板ではむしろ、先の山下智久や錦戸亮ら旧ジャニーズ事務所の後輩の方が、インプレッション数を稼いでいる。俳優のギャラを含めた制作費と話題性、視聴率のコストパフォーマンス対決では、1話あたりの制作費8000万円といわれるキムタクは、事務所の元後輩たちに完敗だろう。
テレビ朝日は旧ジャニーズ事務所の性加害報道以降、登用を自粛していた木村、井ノ原快彦、亀梨和也の新生STARTO ENTERTAINMENT社を担うベテラン3人を投入した。
ところが、ビデオ録画率やドラマ配信サイトの視聴実績を総合した、某テレビ視聴率サイトの総合視聴率評価で、亀梨が石原さとみとW主演する「Destiny」が健闘したものの、STARTO ENTERTAINMENT社アベンジャーズは、長谷川博巳主演のTBS日曜劇場「アンチヒーロー」、そして「ブルーモーメント」による1位、2位の軍門に下る結果となった。
番組制作会社幹部が言う。
「井ノ原主演の『特捜9』は最終回で、シーズン5から古参メンバーと馴染んで存在感が光っていた山田裕貴の卒業が決まった。旧ジャニーズ事務所寄りのスタッフと確執があったと噂される津田寛治のレギュラー降板と脚本の劣化で視聴者が離れ、今期もジワジワと視聴率を落としていた。そこに山田の卒業で、テレビ朝日の看板である『刑事ドラマ』『警察ドラマ』を楽しみにしている視聴者は、いい気分はしません。テレビ朝日の視聴率を支える中高年は、旧ジャニーズタレントを見たいわけではありませんからね」
STARTO ENTERTAINMENT社に執着したテレビ朝日が自滅する中、テレビドラマ視聴習慣のある中高年にウケのいいベテラン俳優の配役の妙で見せる「イケオジドラマ枠」の、コスパの良さに気付いたフジテレビ。今春の視聴率の動向は、今後のドラマ制作にどう影響するのだろうか。
(那須優子)