世間と同様、役者の世界にも厳しい上下関係は存在する。ところが時には、予想を覆す対応の先輩俳優が登場することも。ドラマ現場での驚くべきエピソードを明かしたのは、俳優・歌手の中村雅俊だ。
関根勤のYouTubeチャンネル〈関根勤チャンネル〉に出演した中村は、テレビドラマ初出演作「太陽にほえろ!」(日本テレビ系)での大失敗談を語り出した。
中村は1974年4月から9月まで放送された青春学園ドラマ「われら青春!」(日本テレビ系)で主演を務め、本格デビューを飾った。だがその前に一度、ドラマの現場を経験しておいた方がいいと、同じプロデューサーの縁で「太陽にほえろ!」の第84話(1974年2月22日放送)に、医師役として出ることになる。
撮影当日、中村は役者仲間と徹夜で麻雀にふけっていた。午前10時頃に電話が入り、怒声が聞こえてくる。
「あなたすぐ(撮影所の)国際放映に行きなさい! 今日、撮影日!」と
翌日が撮影日だと聞かされていた中村は驚き、2時間半遅れで現場に赴いた。
「どうもすみませんでした!」
当然ながら、主役の石原裕次郎に平謝りの中村。しかし裕次郎は「おう」と言って手を挙げるのみ。中村いわく、
「それだけだった。どこの何者かもわからない俺が2時間半遅れて。裕次郎さんが怒鳴ることなく『おう』で終わった時に、結構ビックリしちゃって…」
裕次郎亡き後の石原プロモーションを支えた渡哲也はデビュー当時、撮影現場で挨拶に赴くと裕次郎が、
「石原裕次郎です。キミが新人の渡君ですか、頑張って下さいね」
と優しく声をかけ、自ら進んで握手したことは語り草になっている。いずれも名優の人間性を垣間見る行動といえよう。
(所ひで/ユーチューブライター)