岸田文雄首相が今国会会期末の衆院解散に躊躇する中、政局の焦点は9月の自民党総裁選へと、徐々にシフトし始めている。注視されているのが、加藤勝信元官房長官の動向だ。
岸田首相は解散しない場合、7月中に自民党役員人事を行う算段で、加藤氏を幹事長などの要職で起用することを考えているという。
だが加藤氏は、ポスト岸田の有力候補として急浮上している人物。ここで幹事長職を受けた場合、
「岸田支持を表明したことになり、秋の総裁選に出馬する資格を失うことになる」
と全国紙政治部ベテラン記者は言う。逆に加藤氏が岸田首相の要請を断り、「乱」を起こせば、一気にポスト岸田の最有力候補となり、岸田再選の道はますます険しくなる。
岸田首相は解散をしない場合は総裁選での再選をニラみ、7月中にも内閣改造・党役員人事を断行する方向で、検討に入っているという。北海道新聞が報じ、永田町ではそんな見方が流れている。
通常なら総裁選を控える7月の人事など考えられないが、与党ベテラン秘書は、
「ポスト岸田候補を切り崩すことが狙いですよ。石破茂元幹事長など、人事を断る勇気はないだろうと、足もとを見ている」
その目論見を察したかのように、自民党の菅義偉前首相は6月6日夜、「ポスト岸田」候補と目される小泉進次郎元環境相、加藤勝信元官房長官と、東京都内で会食。安倍派の萩生田光一前政調会長、二階派の武田良太事務総長も同席し、結束を確認した。
岸田首相は今回の政治規正法改正案をめぐる動きでも、政権の足を引っ張った茂木敏充幹事長を交代させ、後任に茂木氏とはソリが合わない加藤氏を起用したい。しかしこれを断る男気を見せれば、党内で評判がいい加藤氏は、一気にポスト岸田の有力候補となる。そして意中の候補に断られた岸田首相は、大ピンチに陥る。
「加藤の乱」は再び起きるのか。「元祖・加藤の乱」は2000年11月20日、野党が森内閣不信任決議案を提出する動きを見せると、加藤紘一氏、山崎拓氏とその周辺議員が同調する構えを見せた一連の騒動だ。岸田首相も加藤派の議員として、乱に加わっていた。
(健田ミナミ)