春ともなれば日本各地で花が咲き、そこには多くの観光客が訪れる。中でも千葉県は桜と菜の花で知られ、東京から近いこともあって、毎年バスツアーが組まれるほどの人気ぶりだ。ところが今年、千葉の菜の花の名所に異変が起きている。
それは市原市にある通称「石神の菜の花畑」。畑の真ん中を突っ切る形で小湊鐵道の線路があり、菜の花と列車を同時に撮影できると、鉄道ファンだけでなく一般の観光客も数多く訪れる。
ここはもともと水田だったが、休耕田になったのをきっかけに菜の花の種を撒き、毎年、地元のボランティアが保全を行ってきた。
ところが今年は、菜の花が全く咲いていないのだ。それを知らずに現地を訪れて「なぜこんなことになっているのか」「菜の花はどこへいったの」との嘆きが、SNSのそこかしこで見られるのだ。石神を毎年訪れている鉄道ライターが言う。
「石神の菜の花はここ数年、毎年のように不作で数が少ないと、話題になっていました。地元の人によると、原因は連作障害ではないかと。菜の花はアブラナ科アブラナ属の植物で連作障害が起きやすいのに、毎年続けて種を撒いたのがよくなかったようです。似たような現象は、栃木県の真岡鐵道でも起きています。北真岡駅近くの菜の花畑が有名ですが、やはり連作障害で数が減ったことがありました」
ただ、今年は連作障害だけが理由ではないという。
「冬の間に菜の花の芽を、鹿とキョンが食べてしまったそうです。鹿よけの電柵を設置したのですが、破られてしまい、効果がなかったとか」(前出・鉄道ライター)
そんな経緯もあって問題になっているのが、管理の難しさだ。菜の花を毎年育てるのは、人手もお金もかかる。
「19年には菜の花を守るためのクラウドファンディングが立ち上がり、多くの賛同者が集まって目標金額の100万円を達成しました。しかし、これで十分ではありません。そこで鉄道ファンに、厳しい目が注がれることになりました。撮り鉄は列車に乗らず、菜の花の保全に力を貸すことも、まずありません。以前から『地元の人が育てた菜の花の景色にタダ乗りしている』という批判がありましたが、それが強くなっています」(前出・鉄道ライター)
鉄道ファンと地元の人たちが力を合わせれば、来年は立派な菜の花畑ができあがるはずだ。