このところ、中山秀征が出演する番組がやたら目につく。フジテレビの「ぽかぽか」(6月12日放送)、日本テレビの「おしゃれクリップ」(6月16日)、TOKYO MXの「5時に夢中!」(6月13日放送)、テレビ朝日の「証言者バラエティ アンタウォッチマン!」(5月28日放送)といった具合だ。
少し前までは、唯一の地上波レギュラー番組である「シューイチ」(日本テレビ系)と、地元の群馬を取り上げた番組に井森美幸とセットで出演し、上毛かるたの読み札を言い合うくらいでしか見かけなかったのに。ここにきてのこの露出の多さには面食らってしまうが、フタを開ければ、どの番組も自身の著書「いばらない生き方 テレビタレントの仕事術」の宣伝目的だった。
ただ不思議に思ったのは、全ての番組で中山のことを異常に持ち上げること。過去の出演番組がいかに凄いかと紹介され、後輩芸人達がその親しみやすさから「ヒデちゃん」とイジリながらも「実は凄い人」的に絶賛。まるで「大御所」や「レジェンド」のように扱っているのを見て「そこまでのタレントか!?」と、ただただ驚くばかり。
その昔、松本人志の著書「遺書」に書かれていた「レギュラー番組を十数本持ったことを自慢していたタレント」の箇所が、この中山を揶揄しているのではないか、という憶測が流れたことがあった。
お笑いファンやお笑いを目指す若者にとっては当時、松本はカリスマを超えて神のように崇められる存在だったわけで、その神がお書きになった「聖書」の一文を、周囲の憶測にもかかわらず、鵜呑みにした者は少なくないだろう。
松本に心酔するお笑い好きからすれば、中山は「憧れ」の対象とはほど遠い位置にいる。その結果、さらにテレビ界で影響力を強めていった松本とは対照的に、中山は徐々に活躍の場を減らしていったように思う。
しかし松本が、例の性加害報道により活動休止をしている今、「鬼の居ぬ間に」とでもいうかのように「ヒデちゃんリスペクト」な空気になっているのは興味深い。
先述の「おしゃれクリップ」でVTR出演していた、ぱーてぃーちゃん、四千頭身、ちゃんぴおんずの3組も、「ぽかぽか」のMCハライチも、中山と同じワタナベエンターテインメント所属のお笑い芸人で、後輩という立場ではある。
が、同じ事務所の後輩たちが祀り上げているだけ、と言い切れない点もある。例えば先日の「耳の穴かっぽじって聞け!」(テレビ朝日系)で、井口浩之(ウエストランド)から「芸人始める時は、どういうふうになりたいとかありました?」と聞かれた久保田かずのぶ(とろサーモン)が「中山ヒデちゃん」と即答。あまりに現在の自分と芸風がかけ離れていることを「で、今これ」と自嘲気味に語っていた。
過去には、ノブ(千鳥)が高校時代に、大悟と一緒に文化祭の司会をするも大スベリし、「ヒデちゃんって凄かったんやなぁ」という結論に至った、というエピソードを明かしていた。久保田もノブも、吉本興業所属の芸人だ。
ちなみに私個人は、中山を凄いと思ったことは一度もないし、笑わせてもらったこともないので、正直、芸人とは認めたくないのだが…。
ここにきての「ヒデちゃん激推し」は、アンチ松本の逆襲か、はたまたコンプライアンスに怯えるテレビ局にとってちょうどいいタレント、ということかもしれない。
(堀江南)