自民党の菅義偉前首相がついに、岸田文雄首相に公然と「退陣」を要求した。6月23日に「文藝春秋」オンライン番組に出演し、次のように言及したのだ。
「このままでは政権交代してしまう、との危機感を持つ人は増えている」
さらには裏金事件についても、強い口調で断罪。
「首相自身が責任に触れず、今日まできている。不信感を持っている国民は多い」
そして総裁選で新たなリーダーが登場するべきかと問われると、
「そう思う。党の刷新の考え方などを理解してもらえる最高の機会。きちんと対応していくことがひとつのチャンスだ」
自民党内では旧安倍派(清和会)を中心に、この発言に共感する声が広がっているが、問題は菅氏が「ポスト岸田」で誰を推すかだ。
菅氏は最近、石破茂元幹事長支持に傾いている、との見方が出ている。2021年の総裁選で、菅氏は河野太郎デジタル担当相を推した。河野氏、石破氏、小泉進次郎元環境相のいわゆる「小石河連合」の後ろ盾となったが、今回もその流れで、世論調査で支持が高い石破氏を担ぐのではないか、との観測がある。
石破氏と安倍晋三元首相との確執はよく知られていたが、菅氏には安倍氏ほど、石破氏に対するわだかまりはない。
ただ、旧安倍派所属議員は、安倍氏と石破氏が激しく対立した経緯を知っているだけに、仮に菅氏が石破氏を支持しても「同調できない」と断言する議員は少なくない。それどころか、
「菅氏は安倍政権で長らく官房長官を務めていたのに、よりによって『天敵』の石破氏を推すなんて事態はありえない」(旧安倍派中堅議員)
と、菅氏を牽制する動きも出ている。
「ポスト岸田」のキングメーカーとしての復権を目論む菅氏だが、誰を推すかとなると、難しい判断を迫られそうだ。
(田中紘二/政治ジャーナリスト)