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【ユーロ2024決勝トーナメント】優勝候補ドイツやイングランドが最も警戒する「ダークホース」が判明

 開催国ドイツの圧勝劇で幕を開けたサッカーの欧州選手権「ユーロ2024」は、グループリーグ全36試合が終了した。

 6月27日(日本時間)の予選最終日に行われたグループEは、全4チームが勝ち点3という大混戦。そして、最終戦の2試合までが引き分け決着となった。4チームが勝ち点4で並ぶ史上初の事態は、得失点差でウクライナが涙を飲む形となったが、激闘の連続だったグループリーグで、大いに盛り上げてくれたのが「ダークホース」の存在だ。

 16年大会で試合後の儀式「バイキング・クラップ」を世界中で流行らせたアイスランド、20年大会ではチームメイトの一時心肺停止の悲劇から奮起し、ベスト4に進出したデンマークなど、近年のユーロは〝意外な国〟が大会の主役となるケースが目立っている。

 そこで、6月30日深夜(日本時間午前1時)にスタートする「決勝トーナメント」を前に、ユーロがさらに楽しめる、サプライズ3カ国を紹介したい。

【スイス】

 大会前、実は早期敗退の懸念があった。天才的なパスワークと強烈なリーダーシップを持つMFグラニト・ジャカと、クラブや代表でクリーンシート(無失点)連発のGKヤン・ゾマーは健在だが、国際大会で戦えるレベルのストライカー不在で攻撃陣に不安を抱えていたからだ。

 ところが、第1節のハンガリー戦を3―1で勝利すると、その後はサイドや中央から変幻自在に切り崩し、相手のペナルティエリア内には5人が入り込み、分厚い攻撃を見せるなど、世間の心配は何のそのというサッカーを見せたのだ。

「第3節のドイツ戦は引き分けでしたが、内容はスイスに軍配が上がりましたね。その証拠に、試合のたびにファンを増やし、SNS上では『スイス推し』のファンが急増しています。ベスト16で当たるイタリア戦の懸念材料は、自国のチーム情報や対戦相手に関するデータが入った、スイスコーチ陣のパソコンがホテルで盗難被害に遭ったと報じられたこと。この影響が出なければいいのですが…」(サッカーライター)

 PK戦に強いチームだけに、組み合わせ的に初の決勝進出が夢ではない。

【ジョージア】

 大会前の優勝オッズは24チーム中最下位、ダークホース中のダークホースがジョージアだ。

 勝ち点1で迎えた第3節、引き分けでもグループリーグ敗退という崖っぷちの中で迎えたのは、クリスティアーノ・ロナウド率いるポルトガルだった。この試合、ジョージアのサポーター以外は誰もがポルトガルの勝利を予想していたはずだ。ところが、結果は2-0でジョージアの勝利。試合終了の瞬間、観客席のジョージアVIPが涙を流し立ち上がれないほどだった。前出のサッカーライターは、この試合に衝撃を受けたという。

「イタリアのナポリで活躍するFWクビチャ・クワラツヘリアの先制ゴールは見事な1本でした。しかし、凄かったのは、23本のシュートを放ったポルトガルを零封した守備です。90分間、運動量が落ちない、まさにジョージアの勝ちたい気持ちが上回った感じでした。フランス人監督のウィリー・サニョルはモチベーションを上げるのに長けていて、試合前に『16歳や17歳の時みたいに夢中でプレーしたことを思い出せ』とはっぱをかけ、選手たちを奮起させたようです」

 まさに、夢中でサッカーをやる少年たちのような、けれんみがない1戦だった。次はスペイン戦だ。グループリーグ唯一の3戦3勝の「無敵艦隊」を飲み込めるか。

【オーストリア】

 大会前はフランス、オランダ、ポーランドがグループリーグ突破をかけての三つ巴の争いになると言われていた。が、フタを開けて見れば、伏兵のオーストリアが堂々の首位通過となった。

 特に圧巻だったのは、34年ぶりに難敵を下した第3節のオランダとのシーソーゲームだろう。

 1―0で前半を折り返すと、後半2分にオランダのFWコーディ・ガクポのコントロールショットでゲームは振り出しに。

 スタジアムはもちろん、テレビ実況までがオランダの逆転に期待するムードが一気に高まった。しかしそれを打ち砕いたのが、オーストリアの小兵MFロマーノ・シュミットのヘディングシュートだった。

 その後、オランダが再び同点弾を叩きこんでも、すぐさまオーストリアが突き放す展開となった一戦は、オランダ選手の心が徐々に折れていくのが目に見えてわかるほどだった。前出のサッカーライターがオーストリアの強さに舌を巻く。

「首位通過は、オーストリアのラルフ・ラングニック監督が『信じられない』というほどの大番狂わせでした。ですが、試合内容は3試合すべてが相手より上回っていましたね。レアル・マドリード(スペイン)に所属する唯一のスター選手、DFダビド・アラバは怪我のために出場できていませんが、それでチームが一丸となったと聞いています。選手全員がハードワークと献身性を忘れず、むしろ『失うものは何もない』と、強国相手でも臆することなく戦えるようになったんです。それに、みんなシュートが上手い」

 ベスト16ではトルコと激突するが、3月の国際親善試合では6―1で圧勝している相手だけに有利だ。1位通過の恩恵で、決勝トーナメントの組み合わせでは恵まれた位置に入っている。

 ダークホースの中で、ドイツやイングランドといった優勝候補が最も警戒している国、それは間違いなく「オーストリア」だろう。

(風吹啓太)

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