運転手の労働時間が制限されることで、乗務員不足が生じる「2024年問題」に悩まされているバス業界。日本各地でバス路線の減便や廃止が続いている。その乗務員不足はバス業界のみならず、鉄道にも影響を及ぼし始めた。
千葉県を走る小湊鐵道は、今年3月から運行している「キハ40形観光急行列車」を、6月29日から減便している。これまで土曜日、日曜日、祝日に運行してきたが、日曜日だけになったのだ。小湊鐵道の公式サイトによると、鉄道運転士と車掌人員の不足が原因だという。
小湊鐵道はバス事業も展開しており、昨年4月にはバス路線の大幅な減便と廃止を行ったが、その波が鉄道にも及んだことになる。2024年問題とは無縁と言われてきた鉄道業界だが、事態は思いのほか深刻だと、鉄道ライターが指摘する。
「観光急行列車の運行を始めたのは今年3月です。開始にあたり、人員の確保や運行時刻など、綿密な計画を立てたはず。それからわずか4カ月で減便するということは、運行計画が甘かったか、人員不足が急激に進んだということでしょう。コストにシビアな感覚を持つローカル路線が甘い計画を立てるとは考えにくいので、複数の乗務員が急に辞め、人員不足に陥ったと思われます。小湊鐵道は『運転士・車掌の育成に向けて一層努力してまいります』と公式サイトで発表していますが、解消にはかなり時間がかかるでしょう」
減便は財政的にも大きな影響を与える。鉄道ライターが続けて語る。
「観光急行列車は乗車券の他に、指定席券を購入しないといけません。料金は600円。キハ40は1両あたり68席なので、2両編成の観光急行列車は136人が定員となります。仮に100人乗れば、売り上げは6万円。1日あたり4便ありますから、24万円になります。地方ローカル線にとって、これは大きな数字」
地方ローカル線はどこも、社員の高齢化が問題化している。小湊鐵道のピンチは決して他人事ではない。鉄道の減便は、今後も日本各地で続きそうである。
(海野久泰)