まさに異例の緊急トレードだ。最下位に沈む西武と、首位を独走するソフトバンクの、交換トレードが成立した。西武の育成選手・斉藤大将投手とソフトバンク・野村大樹内野手が、それぞれ新天地での活躍を目指す。
斉藤は2017年ドラフト1位で西武に入団。1軍ではわずか1勝しか挙げられず、2021年オフに戦力外通告を受け、育成選手として再契約した。2023年オフに3度目の戦力外となったが、またしても再々契約した育成選手だ。
一方の野村は、2018年ドラフト3位でソフトバンクに入団した。昨季は2軍で打率3割1分4厘の好成績をマークし、1軍ではプロ初本塁打を放つなどアピール。今季はレギュラー陣の層の厚さなどもあり、まだ2試合しか出場していないものの、将来のレギュラー候補と目されていた。
育成選手と若手ホープとのトレードは、圧倒的にソフトバンクが不利なようにも見えるが…。スポーツライターが語る。
「一部関係者からは、山川穂高FA移籍による人的補償の『お詫びトレード』という声が聞こえてきます。西武は山川の人的補償として和田毅の指名を打診しましたが、和田が引退を持ち出して拒否したとされます。その後、両球団が話し合い、6年目の右腕・甲斐野央が西武に移籍することになった。いわばソフトバンクは、西武にひとつ借りを作ったことになる。今回のトレードは、その借りを返す意味があったんじゃないでしょうか」
現状、西武はとにかく打線を強化したい。ソフトバンクは、育成に落ちたとはいえ、ドラフト1位の斉藤を下支えし、復帰を見守る余裕がある。また選手枠がひとつ空いたことで、さらなる戦力補強が可能となった。
どうやら両者の思惑が一致し、全てが丸く収まるトレードだったようだ。
(ケン高田)