あの名物番組が好調だ。18年ぶりに帰ってきた「新プロジェクトX~挑戦者たち~」である。7月6日に放送されたのは、黒柳徹子が通ったことで知られ、個性を育む教育を貫いた小学校「トモエ学園」の物語。これが個人視聴率5.1%(ビデオリサーチ調べ・関東、以下同)を記録した。
「6月29日のオンエア回も4.1%を記録。人気番組が復活しても、たいていの場合は当時の勢いを取り戻せず終わってしまうことが多いのですが、現時点では合格なのではないでしょうか。もちろん、ネタを出しきってしまえば、番組の寿命が短くなることが分かっているのでしょう。18年前の旧作と交互に放送しています」(放送作家)
2000年から5年間にわたり放送された旧作では、黒四ダムや青函トンネルなどの巨大建設工事、VHSの開発や東海道新幹線の建設、あさま山荘事件の舞台裏など、日本の産業史・現代史に残るプロジェクトに関わった人々のドラマを紹介し、団塊の世代を熱くさせた。だがそんな名物番組には「拭えない汚点」がついている。前出の放送作家が言う。
「ヤラセ疑惑です。というより『疑惑』ではなく、まぎれもない事実ですね。当事者たちからの訴えが、頻繁にありましたから。例えば2005年5月10日に放送されたのは、校内が荒れていたという大阪府立淀川工業高校(現・大阪府淀川工科高校)。新任の国語教師が他の職員の反対を押し切り、男声合唱部を設立したというものです。合唱を通じて生徒を更生させ、合唱コンクールに出場するというストーリーでした。そのコンクール会場には主催側の要請でパトカーが出動するなど、警戒感が広がっていたというのです。ところが実際の淀川工業高校は荒れてなどおらず、パトカーも出動していなかったのだと。これを同校が、事実とは異なる点があるとして、訂正・謝罪要求を申し入れました」
ほかにもTOTOが1980年に開発したウォシュレットが、番組の中では国内初の温水洗浄便座と紹介されていたが、実はそれからさかのぼること13年の1967年、伊奈製陶(LIXILのINAXブランド)が発売した「サニタリーナ61」が「本当の国内初の温水洗浄便座」だった。
「あさま山荘事件」の回では、地元住民が機動隊員に毎日、大量のおにぎりを作って協力したと紹介されていた。実際におにぎりを作ってはいたものの、極寒のためにすぐ凍り付いてしまう状況で、温かい食事にありつけたのは外周警戒の者だけだったという。
こうした疑義に対する当事者からの抗議により、番組が謝罪したり、ビデオソフト化が見送られるケースがあったという。では、こうした過去の教訓は、今のシリーズに生かされているのだろうか。
「6月15日に放送されたのは、スーパーコンピューター『京』の開発秘話。ところが開発責任者だった人物が全く登場しないことから、『どう考えても歴史修正』『テレビの情報操作って恐ろしい』といった声が上がりました。これに対して、あるネットメディアがNHKに問い合わせたところ、『個別の番組に関する取材制作の過程についてはお答えしておりません』という回答が得られたそうです」(テレビ関係者)
旧作の偏向報道は、制作統括を担った元プロデューサーの一存でストーリー展開が決まっていた、との話もある。今シリーズでは暴走なきよう…。
(野田守)