テレビ番組はパリ五輪一色だが、7月29日の主役はやはり柔道の阿部一二三と詩の兄妹だった。特に、2回戦でよもやの一本負けを喫し、メダルに届かなかった詩の戦いはかなりの時間を割いて報じられた。
そんな中、敗れたあと立ち上がれなくなるほど号泣した詩の振る舞いが注目の的に。彼女が抱えていたプレッシャーや「頑張っていた姿」を理由に、同情する意見、感動したといった類の声は多かった。
ところが「ゴゴスマ -GO GO!Smile!-」(TBS系)では、MCや大久保佳代子らが詩の号泣について肯定的な意見を述べる中、同じくコメンテーターの元宮崎県知事の東国原英夫氏だけがただ一人、「武道家としていかがなものか」と苦言を呈した。これに関して、週刊誌記者が話す。
「他の人たちが全員、感動話にもっていったため、どうしても言いたかったのでしょう。番組的には蛇足という感じは否めませんでしたが、東国原氏は阿部詩にもう少し毅然と振る舞ってほしかったと話しました。直後に『番組からつまみ出せ』『自分はロクなことしてこなかったのに』など、散々なコメントであふれてしまいましたね」
ギャン泣き直後は、東国原氏と同じような批判が多々ありました。しかし翌日になって試合後のコメントが拡散されたことで、落ち着いてしまう。これが東国原氏にとっては、逆風の要因となった。
「五輪史上に残る大絶叫は、あの場面では異様にしか思えませんでした。観客から詩コールが出るファインプレーがあって救われましたが、見事な1本勝ちにあえて喜ばなかった相手選手に対して失礼という意見は当然ですし、実際に次の試合時間が遅れました。運営側から早く退場するように促されていましたし、あの赤ん坊のような大きな泣き声を批判する声が多くあったのは仕方ありません」(前出・週刊誌記者)
ギャン泣きから3時間後、詩はメディアに対して相手の強さを認め、兄へ期待するコメントを出す。それが批判した人たちの気持ちを落ち着かせた。その「もう終わったこと」というムードの中で、東国原氏のコメントは「まだ言うか」となってしまったということか。
「ただし、東国原氏の意見が間違っているとは思えません。前回の王者なら王者らしく振る舞ってほしかったという気持ちはわかります。ですが、詩はそれがヨシとされる〝愛されキャラ〟だと考えるべきだったのでしょうね」(前出・週刊誌記者)
詩に勝ち、金メダルを獲得したウズベキスタンのディヨラ・ケルディヨロワは「ウズベキスタンの女性の生き方を変えたい」と、優勝後のコメントも使命感に満ちていた。あのギャン泣きはケルディヨロワの冷静さと比較され、余計に批判された部分はあろう。ウズベキスタンの金メダリストは、「柔道界のアイドル」とは置かれている立場や国の状況が、根本的に違うのだ。
(田村元希)