「また来年、3億円も払うのか…」
大きな落胆とともに、中日ファンからはこんな言葉が漏れている。
引き金になったのは、8月7日のDeNA戦だった。両チームとも打線が沈黙し、ゼロ行進のまま延長戦に突入。中日は12回裏、5番の石川昂弥がレフトへのヒットで出塁する。田中幹也が代走に送られると、6番・村松開人が見事に送りバントを成功させて二死二塁とした。
この一打サヨナラのチャンスで立浪和義監督が打席に送ったのは、中田翔。ところが中田はカウント1-2から空振り三振で、あっけなくゲームセット。スタンドからは「立浪は何回、中田にチャンスを与えたら気がすむのか」「3億円の置き物」などと罵声が飛んだ。
中田は巨人から自由契約選となり、今季から2年総額6億円、日本ハム時代と同じ背番号6などの好条件を提示され、中日に三顧の礼で迎えられた。しかし、ここまで打率2割1分8厘、4本塁打、21打点。得点力不足に悩むチームを救うことはおろか、ファンの指摘通り、高額な置き物と化している。
立浪監督は試合後、中田の代打について、
「歩かされると思ったけど、歩かされなかった」
と敬遠覚悟だったことを明かしたが、一打逆転のシーンで四球覚悟の際どい攻めをされることなく、普通にストライクゾーンで直球勝負されたのだから、相手チームからどれだけナメられていたかがわかろうというもの。
そもそもランナー2塁で、DeNAはソフトボールのような前進守備を敷いた。3球目の148キロは、審判によってはストライク判定されてもおかしくなく、三球三振だった可能性もあった。せめてコンパクトに振り抜くことを意識すれば、進塁打くらいは打てたかもしれないが、最後は無駄に大振り。ファンはアキレるしかないだろう。
この日はウエスタン・リーグのソフトバンク戦に、ビシエドが4番・一塁で出場。3打数2安打1本塁打で決勝点を叩き出し、チームの勝利に貢献している。ここまで2軍では打率3割1厘、長打率4割9分、OPS.855と大暴れ。「今すぐにでも中田と入れ替えろ」とファンが叫ぶのは当然で、ビシエドの昇格を待ち望む声は日に日に高まっている。
立浪監督は今季、ビシエドよりも中田や中島宏之を優先して1軍に昇格させているが、まるで結果を出していない。及び腰の中田のスイングを見るくらいなら、ビシエドの豪快な一発に期待したいと、ファンの誰もが思っている。
(ケン高田)